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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

ギャンブラーの性

 ギャンブルが大好きで、もう65才になってしまった。18才でパチンコ、20才で競艇、あと外国ではカジノと、もう散々やってきた。そして分かったことは、負けるということ。どのギャンブルもトータルすると全部負け。但し、一日単位だと勝つこともあるってことだ。この為「今日は勝つ」と思いギャンブル場に出掛けるわけである。

 仕事でギャンブル場へ行くこともよくあり、私はつい喜んでしまう。ギャラ貰って遊んで、もしかしたらギャラ以上の金を持って帰れるかもしれないと思うのだ。

 この間、新潟競馬場で馬券を買ってください、という仕事がきた。夏競馬の最後の土曜日だった。「嬉しい仕事がまたきたね」とマネージャーと頷きあった。マネージャーは競馬大好きで毎週土・日曜日は場外馬券売場に通っていたのだ。私は実は競馬はあまり得意ではない。但しスポーツ紙の記者で、よく大穴馬券を当てるT記者の記事をよく見ていたので、この人の予想を買えば大穴が取れると考えたのだ。この人はすごくて本当に40万とか50万とかの配当を当て読者にプレゼントしていた。競艇だと大穴といってもせいぜい5万、本当に大きくて10万位だが、競馬は百万、二百万、いや一千万なんてのもある位、大穴がよく出るのだ。

 私は、T記者の予想を本当に信じていた。12レース中、一本位は50万位の大穴を当てる筈だと。

 新幹線は東京から大宮、そして高崎を経て新潟へ。希望に満ちている時のギャンブラーは明るい。

 そして一レースから撮影が始まった。1レース外れ、2レースも外れ、3レースも外れた。レースごとに馬券をいくら買っていくら負けたかカメラに向かって喋ることになる。4レースも負け5レースも負けた。T記者の予想が全然当たらないので私も外れる。

 8レースあたりになると、ついに本日のギャラが無くなる程の金額を負けてしまっていた。熱くなった。しかし9レース、10レース、そして最終レースまで全て外したのである。こんな完璧なまでに負ける芸能人っているのだろうか? するとディレクターが「いますよ」と言った。この番組に呼ばれた人は殆ど負けて帰るらしいのだ。

 そして完全にギャラは無くなり5万円持ち出しである。仕事に来て5万円無くなるなんて詐欺に合ってるのでは?と考えたがそうではないらしい。

 帰りの新幹線のグリーン車でグッタリしていた。そしてトイレに行く。帰って椅子に座ろうとして頭を網棚にガツンとぶつけてしまった。

「いたい」。

 上越新幹線のグリーン車に驚いた。2階建てのせいか荷物を載せる網棚が背丈より低いのである。こんなバカなことって…。本日は本当に悲しい日になってしまった。

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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