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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

ロイヤルルームにて

 20才からずっと競艇をやってて67才になった。46年やり続け、まだこれからも競艇で遊ぶつもりだ。負けた金額は正確につけているわけではないが、おそらく1億円は超えているだろう。そう考えると損したな~と思うけどその分楽しんだとも言える。
 最近は一般席ではなくロイヤル席に入ることが多い。一人3000円の入場料だが、ここに入るとゆっくり遊ぶことができる。カバンも置きっ放しで安心である。

 こないだも、ここに入って一日遊んだわけだが、その日はいつもと違った流れになった。
 8名が一つのロイヤルルームにいて、それぞれレースを見て楽しんでいたが、まあ大体が同じ顔ぶれである。その中の一人が万券を取った。万券というのは100円が1万円以上になる大穴券のことであり、競艇をやる人にとっては夢の大当り券のことである。わたしも万券を当てるために競艇をやっていると言ってもいいくらい目標にしている。
 その万券を8名の中の赤い服を着た人が当てた。
「おーっ、取った取った!!」と、その人は喜び、他の人が「えーっ、取ったの」と羨ましがった。取った人が「ご祝儀だ」と千円札一枚を近所にいる人に配り始め、なんと私にも千円くれたのである。その人は7千円の出費であるが、おそらく10万円くらいは勝ったと思う。

「私も万券を取ったら、皆にご祝儀を配らなきゃ」と思う。しかし面倒くさいなとも感じていた。
 何レースかが過ぎて、また万穴が出た。すると、さっきの人が「また取ったよ!」と言い、他の人が「えーっ、すごいね。今日は大勝ちだね」と羨ましがった。
 そしてまた取った人は皆に千円ずつ配ったのである。私にもくれたので、これで2千円その赤い服の人からもらったことになる。
 やばいなー、もらいっ放しはまずい、私も万券を取って返さなければ…。
 しかし、7レース、8レースと全然当たらない。10レースで3万4千円という、とてつもなく大きな万穴が出た。すると皆が赤い服の人をみて「どう、当たった?」と聞いた。「だめ、取ってない」と赤い服の人。
 
 間をおいて私の隣に座ってた人が「あれ俺、この券買ってたよ。買ってないと思ってたのに買ってた。しかも3千円買ってたよ」と言う。何と、隣の人が3万4千円も配当のついた券を3千円も買ってたというのである。3万4千円の配当を3千円買ってたということは何と100万円超の払い戻しである。
 100万円!! 夢の100万円をなにかいとも簡単に取ったと言うのだ。
 私はもう羨ましくて、私自身の当たらなさに嫌気が差してきた。そして、その人からも千円のご祝儀をいただいた。
 ロイヤルルームの中はご祝儀の嵐となった。私も何とかして借りを返したい。万券を当てるべく何種類も買うが全く当たらず。その日は、いつもよりたくさん負けてしまった。

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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