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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

将来への不安

 東北方面のロケで、滑って手の小指を悪くしてしまった。それで文字も絵も描けずに、書く仕事は休みのような状態でしばらく過ごしていた。
 仕事を休んでしまうと、どこからも私にはお金が入らない。だから、こういう状態に陥ってしまうとすごく不安になってしまう。

 ああ、もう生きていられないんじゃないか? 女房はどうなるのか? 心配で何も手につかなくなってしまう。
 どこか大きな会社に勤めていれば会社が何とかして助けてくれるのだろうが、私にはそんな会社もない。実に不安。
 
 好きな道を選んで、一人で家の中で紙に絵を描いたり文字を書いたりしているが、こんなことは、もし私の腹がどうにかなって毎日ゲリというようなことになれば、すべてのことが終わるような気がする。
 やっぱり大きな会社に勤める方が良かったのかなー? 大きな会社に勤める為には、それなりに勉強して努力しなければならないが、安心して世の中を生きてゆくためには、大きな会社に勤めた方が良さそうだ。

 社員が病気になっても
「ハイ、午後からは家に帰って寝てなさい」と言ってくれたり
「明日は、この病院で治療してから会社に来ればいいよ」とやさしく言ってくれる会社に勤めている人は本当に幸せである。そんな会社があるのかどうかは知らないが…。

 昔から行き当たりばったりでテキトーな生き方をしていた私だが、今の年齢はなんと72才。そろそろ死神が「オイデ、オイデ」って言っている気がしてくる。
 雪国でツルンと滑って小指をダメにしたが、そんなことで死ぬわけにはゆかない。

「死神よ、どうか私のそばから離れてください」と祈るばかり。

 

※蛭子さんの指の骨折が文字を書けるまで回復しましたので、今月から連載を再開します。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。(編集部)

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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