シンガポール物語
20年位前、シンガポールに一週間くらい滞在したことがある。TVドラマの撮影で、私は初めてのシンガポールだった。その頃、シンガポールはアジアの中で一番ゴミが少ないと言われていた。確かに街中はきれいである。しかし全くゴミが落ちてないわけではなかった。そして、ものすごく暑かった。ホテルから一歩外へ出ると、汗ビッショリになった。部屋へ戻ると必ずシャワーを浴びた。
私は出番が少なく割と休みが多く、アチコチ一人で遊んだが、その頃カジノはなかった。現在立派なカジノができて、今一度行ってみたいが、新しい嫁と一緒にいるのでママならない。
当時に話を戻すと、ギャンブル場が一つあった。競馬である。2日続いて休みになったので、競馬場へ行こうと、その場所をホテルのフロントの若い女性に聞きに行った。
すると思わぬ言葉が返ってきたのだ。
「明日なら私は休みなので連れて行ってあげましょうか?」と。嬉しいことで、私は返答に困ったが、「本当ですか? では明日まで待ちます」と言ってしまったのである。
いやー困った。若い女性と2人で競馬場へ行く。しかも外国人。英語圏で私は英語喋れない。女性も日本語は多分ダメ。ドキドキワクワクするが、だめだ、誰か一緒に行ってもらおう、と助監督に電話した。するとアッサリ「僕、明日休みだから一緒に行きますよ」と言う。ホッとしたが情けないと思った。
翌朝10時にホテル前に行くと何と彼女も一人友達を連れていた。そういうことか。そうだよな、若い女が年配の俺と好きでデートするわけない。
2対2でタクシーで競馬場へ。何と助監督は短パンとゴム草履がダメと言われ一人帰ってしまった。
さて競馬場では若い女性2人と私一人。相手は日本語の辞書を持ち、私は英語の辞書を持っていた。競馬の馬券を当てることより、この二人が私を嫌にならないか、または退屈しないか、そればかり考えてしまった。
何回か馬券は当たったが安い配当ばかり。日本とシステムが違うかもしれないので買った馬券は全て彼女に見てもらい、払い戻し窓口に行ってもらった。
何万円かの負けを食らい、「この後、ホテルのレストランで夕食に行きませんか?」と誘ってみると、「ホテルは高いからデニーズに行きましょう」と言う。
デニーズといえば当時日本でもアチコチに出店していたファミレスだ。そんなんでいいのか?と思いつつ彼女たちの言うとおりタクシーでデニーズへ。
デニーズでメニューを渡し彼女たちに「好きなものをどうぞ」と言うと、これがすごい。すごい量を注文するのだ。本当にデニーズに来たかったのだという感じ。そして彼女たちの夢はオーストラリアへ留学すること、と言う。
私は日本の漫画家だと言って2人の似顔絵を描いて渡した。この経験は私にとっても初。若い女性(外国人)とギャンブル場でデートなんて。