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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

おじさんの必勝法

 年末年始のギャンブルはまったくよいところがなかった。計5回は平和島や平和島場外の舟券売り場で遊んだがすべて負けであった。
 女子賞金王も賞金王決定戦も大きくマイナス…年明けの平和島での東京ダービーも負けた。たった6名しか走らないギャンブルで、なぜこんなに当たらないのか不思議にも思える。
 そのかわりといってはなんだが仕事は結構こなした。本当に忙しかった。テレ東の「路線バスの旅」が好調で、出演者の一人である私にも他の番組から声がかかったのだろう。
 だからギャンブルで負けた分は仕事で取り戻したと思う。しかし……やっぱりギャンブルで勝ちたいと願う私だった。

 商店街を歩いて食堂に入った。そこで飯を食ってるおじさんが私に言った。
「競艇当たってるかね?」と。
 私は当然「いえ全然、当たらないです。年末年始、かなり負けました」と言うと、
「そうなんだよ、当たらないんだよ。競艇は全然当たらないだろう?」
「ええ」と私。
「だからこう買えばいいんだよ」
「どう買うんですか?」
「いいか、予想したのが全然当たらないんだろう? だから予想したのを買わず、それ以外の舟券を買うんだよ。そうすりゃ当たるよ」と。

 なるほど、確かにそれは言えてるかもしれない。私の予想は、まずスタート展示を見て3名くらい印をつける。展示航走でよいタイムを出した選手を3名くらいチェックする。枠番の1号艇やカドになる4号艇をチェックする。これらを踏まえて舟券の3連単を20点ほど買う。
 競艇では絶対有利なインコース。それを取りやすいのは1号艇の選手である。まず中心に考える。次に選手の格を考える。それは選手の勝率を見ればいい。A級で勝率70パーセントの者とB級で勝率30パーセントではA級者が断然有利。しかしB級の選手がインの取りやすい1号艇で、A級の選手が6号艇だったら、この勝負互角とも言えるのだ。
 3号艇あたりにモーターのタイムが一番よい選手がいたら、また迷う。
 それらを考えつつ20点を買うのだが、結局ほとんど当たらないのである。

 それはなぜか? 競艇は水の上でのレースであり他艇とぶつかり合った時ボートが流され、他のボートが抜き去ったりと、水の上ゆえにハプニングが起きやすいのである。
 これを実感しているのであろう。おじさんは「予想したのを外して買えば当たるよ」と言っているのである。確かに、こちらとしては完璧な予想をしても、水の上で起こりうるハプニングまでは予想しないものだ。しかし、実際にはハプニングだらけなので予想通りには決まらないと、おじさんは言っている。
 きちんと予想した20点を外して他の20点買うのは勇気がいるが、試してみる価値はありそうだ。おじさん、今度やってみるぜ!!

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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