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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

スーパースター

 競艇いやボートレースと言わなければならない。ボートレースでは最近、名人戦いやマスターズチャンピオンと言わなければならない。ややこしくて私達年齢が上の者にはちょっと困ってしまう。ボート界では漢字表記を止めてすべて横文字するキャンペーン中なのである。若い人をボートレースに引き込む作戦か、レースをスポーツとして扱いたいのか。まァその両方であろう。私なんか「競艇=ギャンブルですよ」でいいじゃないかと思うけど。

 それはいいとして、マスターズチャンピオン戦が児島ボート場で行われ、終わった。
 優勝したのは53才の今村豊である。その勝ち方がすごかった。8回闘ってすべて一着だったのである。つまり全勝で優勝したのだ。モーターが良かったとはいえ全勝は難しいものである。「今村選手、おめでとう」と言いたい!

 私のマネージャーは競馬好きなのだが、ボートの大きなレースの優勝戦で私がレース場へいる時は、いつも舟券購入を頼まれる。もう20回以上頼まれたと思うが一回も当たりが無く舟券は下手である。競馬は時々勝って私に「エビスさん、今日競馬当てました」と言うが競馬より闘う人数が少ないボートは一回も当てたことがなかった。いつも3000円預かり500円ずつ6点買いするのだが、マネージャーだけ当たったのを払戻機に入れるのが嫌だから、私
も同じ当たりになるよう同金額を買うことにしている。多分20回ぐらいは連続して外しているんじゃないかな。

 それがなんと、この名人戦でやっと当てたのである。
「エビスさん、優勝戦は今村で堅いですよね。今村の頭固定でいいすよね」
 マネージャーが選んだ券は「1」の今村の一着固定で「2.熊谷直樹」「4.倉谷和信」「5.北川幸典」の2、3着買い。全部で6点、1点500円の全部で3000円である。これを私も同じように買い計6000円を舟券購入機に入れた。でも、私は私なりに考えた他の舟券、つまり高配当のやつも何点か買う。

 そして結果は「1.今村」が逃げて一着。倉谷と熊谷が2、3着、「1-4-2」でマネージャーも私も当たり。配当が1150円で500円買っているので払い戻しは5750円。3000円投資しているので2750円の儲けだ。少ないな~。私に至っては他の高配当券も買っていたので赤字だった。
 でも、マネージャーは初当たりで大いに喜んだ。競馬では万単位で儲けているのに。

 さて優勝した今村豊、今は53才のベテランもベテランだが30年前競艇界にデビューした時のこと。私は競艇に通って10年目くらいだった。その頃の競艇場はギャンブル場である、という雰囲気が強くなんとなく暗いイメージがあった。しかし今村と言う脅威の新人選手が現れ競艇界がパッと明るくなったのだ。うまく言い表せないが、光が輝いたというのか、スーパースターの登場でファンも艇界もガラリと変わったことを覚えている。

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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