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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

清水さくらという選手。

 毎年、長崎県の大村ボート場で行われているのが「蛭子能収杯」である。6月21日から26日まで6日間開催される。私の名がついたレースは、大村の「蛭子能収杯」と多摩川の「エビスカップ」があったが、エビスカップの方は最近行われていない。もしかしたら無くなったのかもしれない……。大村ボートの方は今年もあったし、来年もまたあるのではないかと思うが…。
 
 こ の「蛭子能収杯」の出場選手は全て女子選手である。44名の女子選手が長崎県大村市にやってきて6日間闘いを繰り広げ、最後に優勝者が決まる。私も6日間 行きたいものだが、やはり無理で初日と2日目、そして最終日の6日間の3日間、大村へやってきた。舟券も買って、大負けはしなかったが、3日間トータルで は8万円程のマイナスだった。しかし今回は、あくまでも仕事で来ているのでギャラが発生する。ギャラがいくらかは聞いてないが、おそらく8万円はあるはず。だから今回は負けということにはならないと思う。

 大村という所は、ガチガチの本命で決まることがよくあり、本命を3点くらい買ったとして配当金を見ると、大抵赤字になる。だから本命を買う場合、一点に搾ることが大切なのだ。400円くらいの配当を3連単なら「124」と一点で決める。
 しかし、この大村の難しさは、番組の人の考えで本命レースを組んでいても、レースは時として番組の人の考え通りにいかない時もあるってことだ。そういう時、とんでもない高配当がやってくるのだ。
 大村は本命か大穴のどちらかで決まると思って間違いない。
 
  「蛭子能収杯」の最終日8レース。6枠に清水さくらという20才の新人女子選手がいた。初日から昨日までの5日間で7回レースに出て、全て6着、つまりビ リだった。舟券を買う私達は『まずこの選手はいらない』と考える。買う舟券の対象から外してしまうのである。それは当然だ。7回走って、しかも大外ばかり そして全てビリの6着なのだ。どう考えても、この選手だけは買えない。
 ところが、最終日のこの日、全てビリだったこの選手が何と、スタート行って大外から一マークを回って、トップを走ったのである。場内がシーンとした。
「まさか?」と思ったのだろう。そして3周トップで走りきりゴールした。配当は3連単で19万3110円。約20万円である。これを当てた人は自分でもビックリしだろう。100円が約20万円になるのだから。

 清水さくらという名の選手。愛知県出身の新人女子選手。74回走ってビリが73回、5着が1回という成績の女の子であった。考えれば、こんな成績悪い選手でも、どこかでいつかは一着を取る、それが今日だった。

 せめて「“蛭子能収杯”というレースで私は初めて一着を取った」と記憶してくれればいいな。

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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