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蛭子能収のうきうきギャンブラー人生

ギャンブル仕事は…

 唐津ボート場と徳山ボート場からイベントの仕事が入った。土曜と日曜の連続である。こういう仕事は嬉しい。仕事と趣味が同時にできる。しかも一泊である。唐津が終わった後、列車で徳山まで行き、夜は焼き肉、そしてホテルに泊まって翌日は徳山ボートで舟券を買う。考えただけでも、よだれが出る嬉しい仕事だ。

 男のマネージャーと羽田空港で待ち合わせて福岡空港へ。
 福岡から佐賀県の唐津までは、なんとタクシー。自分のお金では絶対乗らない距離である。仕事となるとお金の使い方も贅沢になる。
 海を見ながらタクシードライブ。そして唐津ボートレース場に着いた。気分的には遊びに来た感じ。さァ、舟券買ってポケットの中のお金を増やすぞって感じである。仕事って感じがしない。

 仕事は2回ステージに上がって、司会者と一緒にボートレースの話をすること。
 私の舟券必勝法とか、過去に勝った経験をベラベラ喋る。しかし時間が経つにつれ、楽しくなくなってきた。勝った舟券が外れてばかりなのである。
 午後4時30分、全レースが終わってイベントも終わり。私は17万円も負けていた。楽しいはずの一泊二日ギャンブル旅行は初日でガツンをやられてしまったのだ。マネージャーと2人、新幹線で福岡から徳山まで。

 徳山では代理店の人が待っていた。「蛭子さん、お疲れさまでした。ホテルにチェックインしたら、すぐ焼き肉に行きましょう」と言う。ホテルの部屋に入ると、やけに広い。だだっ広いと言うか、でもなんとなく暗い感じがする。「東横インくらいの狭い部屋でいいのにな~」と思いつつ、背広を脱いで服入れの棚の中のハンガーに掛けた。何か暗い感じ。
 一人では寂しいというより恐い感じがした。そして焼き肉。好きな焼き肉だけど、唐津で負けたのが尾を引いている。私の顔はなかなか笑顔にならないのだった。

 さて次の日の朝。なんと徳山ボートレース場の1レースは8時半から始まる。こんなに早く始まるレース場は初めてだ。そしてこの徳山ボート場では、私のイラストのミニ展覧会もやっていた。まず展覧会場に座ってお客さんの似顔絵を描くことになった。
 結局、私はレースを見られないので、適当な舟券をマネージャーに頼み、買ってもらうことにした。私が似顔絵を描いていたら、マネージャーがやってきて
「エビスさん、1レース外れました。次の2レースは何を買いますか?」
と言う。結局レースを見られないまま1レースが終わってしまった。私はお金を預け、そして無くなったというわけだった。
 こんな感じで12レースまで終わり、イベント終了。唐津と徳山で計25万円負けてしまった。帰りは徳山から東京まで新幹線で帰ることに。5時間弱、乗っていた。
 ギャンブル仕事は辛いよ……。

 

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著者略歴

  1. 蛭子能収

    1947年長崎生まれ。漫画家、俳優。看板店、ちりがみ交換、ダスキン配達などの職業を経て33歳で漫画家に。その後TVにも出演。現在「蛭子コレクション」全21冊のうち7冊発売中。ギャンブル(特に競艇)大好き。カレーライス、ラーメンなど大好き。魚介類や納豆は苦手。現在、タレント、俳優、漫画家、エッセイストと多ジャンルで活躍中。

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