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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

興奮以上、かろうじて発狂未満

 オレは性の悪い性分を持っている。
 その1つが、巨大仏を見ると、とにかくハンパなく恐くなり、しかし、やがてその恐怖心が興奮のようなモノに変わり、居ても経っても居られなくなるのだ。
 はい、で、ここでまずこの本文を読むのをやめて、ずーっと下にある四コマ漫画を見てきて欲しい。そう、今回はその漫画の方を先に描いてしまい、それに関連することを本文で書こうと思ったのだ。
 はい、見てきた? じゃあ、本文の続きを始めるよ。

 巨大仏とはウルトラマンの全長40メートル、その高さ以上の人型建造物のことでね。とにかく、日本には40メートル以上の巨大仏が計16体あった。“あった”と書いたのは、既にその中の1つの巨大仏が解体廃棄されたのである。
 くれぐれも残念だったのは、オレはその計16体の巨大仏のうち実際に現地に行って生で見ていない巨大仏が3体あり、数年前に解体廃棄されたのが、その中の1体の長崎県にあった七ツ釜聖観音だった。同観音はテーマパーク「西海楽園」の話題作りの1つとして建てられたが、そのテーマパークが閉園されると安全のために真っ先に解体されたらしい。
 ま、ザックリと言ってしまえば、現在の日本の巨大仏たちは、とにかく呆れるほど人気がない。牛久大仏、仙台大観音、久留米大観音などのかろうじて人が見学する需要のある巨大仏も何体かはあるが、その他の巨大仏は殆どが捨て子状態。何でこんなモノを作ってくれたんだ、と近辺の住民たちからも蔑まれるような目で見られてる始末。そう、昭和の中期~後期に数多く作られた巨大仏は、出来た当時こそ話題にはなったが、すぐに飽きられ、無用の長物になってしまったのである。

 が、オレは特に高崎白衣大観音、久留米大観音、淡路島世界平和大観音、仙台大観音の4体は、この先も何度だって見たい。高崎白衣大観音、久留米大観音に関しては、その見た目の美しさがなんとも言えず、特に50メートルぐらい離れた真下から見上げた高崎白衣大観音の、その詰まった顔が醸し出す色気は筆舌に尽くしがたい。また、淡路島世界平和大観音、仙台大観音に関しては、その初めて眼前に現れた時のファーストインパクトの強烈さが何度目にしてもハンパではないのだ。
 坂の下から仙台大観音がいる方向に向かって車で道路を上がっていると、突然何かの特撮のように仙台大観音がヌヌッと出てくる。まさにウルトラマンの実写版の中に叩き込まれたような気分になるのだ。さらに、それよりインパクトがあるのが、世界平和大観音だ。忘れもしない。オレは2011年に生まれて初めて、この巨大仏を目の当たりにしたのだが、淡路島に入って最初のインターの「東浦」から車で下り、そのまま巨大仏があるという方向に走ってると、登り坂の途中でいきなり巨大な、白くゴツゴツした建物が視界に飛び込んでくるのである。が、さらに目を凝らすとそれは建物ではなく、もの凄く雑なフォルムに作られた巨大な人なのだ。そして、心臓をバクバクいわせながら、その人型建造物の真下あたりに行ったところで、初めて(ああ、どうやらコレは正面から見るとムチ打ち症になった女子高生のような観音なんだ……)ということがわかるのである。

 さらに同観音は向かって右側に微妙に傾いていて、その近くに経ってる喫茶店のマスターとかが、とにかく台風でも来たら倒れてきそうだから早く解体してくれと市に何度も訴えてるのだが、この世界平和を作った実業家のジイさんは他界してしまい、その何年か後には嫁のバアさんも他界したことから解体費用を出すものがいないとのこと。そして、この地図にも載ってない世界平和大観音は放置された、100メートルもある巨大な捨て子のまま少し傾きながら建ち続けていたのである。
 が、オレは2011年~2018年ぐらいまでは讃岐うどんを食べに頻繁に香川県に行っていて、その行きか帰りには大抵この大観音の前に立って観察していたので、早い話が、この世界平和大観音には既に20回以上は会っている。何でそこまで小まめに会いに行ってるの?と訊かれても、そういう性分だからとしか答えようがない。とにかくオレは、まずこの観音と会う時はビビリ、が、目の前に立ってポカ~ンとその姿を見ていると、気がつくと30分以上経ってることもあり、また、時には少し離れた海岸からも見えるので、そこまで行って(あ、あの観音ってココから眺めると、お立ち台に乗っているようにも見えるな)なんてホッコリしている自分に少し驚いたりしていたのだ、。
 ところが、である。この淡路島世界平和大観音も遂に2022年までに、地元の市が金を出して解体撤去されることが決まってしまったのである。ま、安全面のことを考えると当然のことなんだけどね……。

 で、先日、相も変わらず日本の巨大仏のことを考えてたら、ふと、世界には日本の牛久大仏より大きい巨大仏が何体あるのだろうと思って、ネットで「巨大な人型建造物」ってジャンルを検索したら、出てきたのが今回の漫画に描かれたものだったのだ。つーか、それらを建てた国に注目してみると中国4体、日本2体、タイ、ウクライナ、ミャンマー、インドが1体ずつで、やはり人型建造物とはいえ、そんなにデカい人型となると観音や大仏といったものが殆どで、そうなると圧倒的に仏教国であるアジアの国々が強い。
 しかし、本体の全長が182メートルっていう、このインドの統一の像がいかにデカいかは、みんなもネットの検索ワード「インド」「統一の像」って文字を打ち込んで、それを見てみ。いかに巨大かがわかるよ。けど、現物を生で見てないからハッキリしたことは言えないけど、巨大仏といっても政治家のオッさんを象ったものでは、踏み殺されるんじゃないかっていうゾクゾクするような恐怖心が沸き上がってこないような気がするのだ。だってネットでその写真を見ても全く興奮しないんだもん。やっぱオレとしたら、女的要素が多い観音でなければ無力感とか脱帽感といったものが沸き上がってこねえんだよなぁ……。やっぱ巨大仏好きとマザコンって、どこかで繋がってんのかな?


 ってゲッツ。自分で言うのも何だけど、お前難し過ぎっ!! そのうち誰にも相手にされなくなるよっ。ガムッ! ガムッ!

 

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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