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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

まるや三バカ親父愚論会 早くも第4夜

ゲッツ板谷

塚ポン

三村
 
 今から10年前、埼玉県富士見市で串カツ居酒屋『まるや商店』を始めた塚ポン(49)。その居酒屋があまりにも居心地が良く、離婚を機に第2の人生を送るために、そのまるや商店の近くに 引っ越してきたオレ(60)。そして、元々そのまるや商店の近くに住んでいて、昼間は自営業で雑誌のデザインをやり、夜は必ずその息抜きにやってくる三村さん(66)。 
 まるやのカウンターでは、いつもこの3人が揃い、ポンコツなムダ話を交わしている。さて、今夜もカウンター上では、何やら熱い話が飛び交ってるようですが……。

三村「今日は俺、メチャクチャ気分がいいんだよなぁ~。……さて、どうしてだ?」
ゲッツ板谷(以下、ゲッツ)「えっ、遂に角野卓造をオナペットにしたマスターベーションに成功したんスか⁉」 
三村「……………」
塚ポン「プハッハッハッハッ! 三村さんの瞳が妙にキレイに……プハッハッハッハッハッ!」 
三村「もうお前らに答えを言うのを止めた!!」 
ゲッツ「いや、冗談ですよっ、冗談! 早く教えて下さいよ、今日メチャクチャ気分がいい訳を?」 
三村「塚ポンがまだ笑ってるから話さない」 
ゲッツ「ほらっ、塚ポン!!」 
塚ポン「あっ、ご……ごめんなさい。もう笑いま、ププッ!! わ、笑いませぼ」 
三村「笑いませぼって何語なんだよっ!! ま、しょうがないから教えてやるけどさ。俺が好きなものって言ったら何だよ?」 
ゲッツ「きゃりーぱみゅぱみゅの“にんじゃりばんばん”!!」 
三村「お前、殺すぞ!」 
塚ポン「プハッハッハッハッ! に、にんじゃりばんばんって、プハッハッハッハッハッ!!」 
三村「もういいっ。答えは大相撲で、つまり、気分がメチャクチャいいのは、今日から、その大相撲の大阪場所が始まったからなんだよ」 
ゲッツ「えっ………」
三村「な、何だよっ、ゲッツ?」 
ゲッツ「つまり、三村さんはそんな個人的な、どうでもいいことをクイズにしてオレたちに答えさせようと思ったんスか?」 
三村「い、いいじゃねえかよっ」 
ゲッツ「よくないっスよっ。じゃあ、三村さんはオレから“何でボクが今日機嫌良くスキップしながらココに現れたんでしょうか?”ってクイズを出されてね。それで、わかんなくて困ってたら答えは“いつも自分の家の庭にある梅の木の実をつつきにくるメジロが、今日はメジロじゃなくモズだったから”って言われたら頭に来るでしょ?? そんなの知ったこっちゃねえ―――よっ!!って」 
三村「いや、俺の場合、そこまで個人的な話じゃ……」
ゲッツ「いや、同じようなもんっスよっ」 
塚ポン「もう止めましょうよ。どうでもいいですよ、そんな話は」 
ゲッツ「こらっ、塚ポン。オレは思い出したぞ!」 
塚ポン「えっ、何を思い出したんスか?」 
ゲッツ「お前、先日、吉本ばななさんがこのまるや商店にお酒を飲みに来てくれた時に、オレがばななさんに酒の肴の100円のナポリタンを勧めてたらさ。慌ててオレたちのいるテーブルに飛んできて“ダメです、ばななさん。ばななさんみたいなちゃんとした人がそんなものを食べちゃいけません!!”って止めてたけどさ。じゃあ何かいっ、オレとか三村さんはちゃんとした人じゃないから、あの100円のナポリタンを勧めてくるんかい!?」
塚ポン「当り前じゃないっスか。ばななさんみたいな世界的な作家の胃袋を、あんなしょーもないナポリタンで汚すわけにはいきませんから」 
三村「そのしょーもないナポリタンを作ってるのは貴様だろうがっ!!」 
塚ポン「YES! WE CAN」 
三村「お前は復活したオバマかっ!」 
塚ポン「YES! 塚ポンクリニック」 
三村「もういいよ!!」 

塚ポン「だって、三村さんって、メジャーで大活躍してる大谷くんのことだって嫌いでしょ?」 
三村「何だよっ、藪から棒に?」 
塚ポン「いや、前から思ってたんスけど、三村さんて騒がれ過ぎてる人のことを嫌いになるじゃないっスか」 
三村「えっ……」 
塚ポン「例えば昔、神奈川県の藤沢でラーメン屋をやってた、もう亡くなっちゃったけど、佐野さんという人がいたじゃないっスか」 
三村「あ、俺、アイツ大嫌い! 店内でケータイ電話が鳴ったら、その客のことを怒鳴りつけるんだろ? まったく何様だと思ってやがるんだよ!」
ゲッツ「いや、三村さんはケータイが鳴ったら佐野さんが怒るから彼のことが嫌いなんじゃなくて、ラーメン屋なのにあんなに騒がれたり、どの媒体に出てもあんなに堂々と自分の意見を言ったりする佐野さんが嫌いというか、許せないんですよ」 
三村「おい、何だよっ、そりゃあ⁉」 
ゲッツ「つまり、いい気になってる奴がポン!と媒体に出てくると、頭の中にこんにゃろう、得意気になってんじゃねえぞ!!っていう三村さんが出てきて、もう相手のことが許せなくなるんですよ。で、大谷くんのケースでも、三村さんはドジャーズと契約したくらいまでは単純に凄いなぁ~と思ってたんだけど、やれその金額が1000億円とか知ったり、再びMVPを獲得したりってニュースを聞いてるうちに、遂に(もういいよ、アイツ)と思うようになったんですよ。つまり、三村さんは無意識の内にスーパースターと自分を比べちゃって、勝てないとわかるとソイツのことがとにかく嫌いになるんですわ」 
三村「二流ライターのお前に、どうしてそんなことがわかるんだよっ!?」 
ゲッツ「オレにもその傾向があるからです。でも、三村さんほどじゃない。やっぱり、イチローとかマイケル・ジョーダンとかは、とにかく凄いと思う。もう、そのプレーに対しては尊敬するしかないんですよ」 
三村「スポーツ関係はいいとして、同じ物書きに対してはどう思ってるんだよ?」 
ゲッツ「いや、勿論嫌いな奴とか、バカじゃねえの!!とか思う奴もいますよ。でも、そういう嫌ってる暇があるなら、もっと好きだっていう人の文章を読んだり、媒体を観たりしますよ、オレは。それにオレは、例えば知らない人に話し掛けられたら、その人に生理的な嫌悪感を感じたり、失礼なことを言われたってことが無い限りは、まず60%ぐらいは相手のことを受け入れて会話をしますからね」 
三村「いや、それは優し過ぎだよっ」 
ゲッツ「三村さんの場合、いきなり話し掛けられて、その相手に親切に答えてやろうって確率は5%ぐらいでしょ?」 
三村「5%もないんじゃねえかなぁ~」 
ゲッツ「キャームと同じですよ。アイツも実は、自分の周囲に高い塀を作ってて、その塀の中に出入り出来るスペースは20センチぐらいしかない。で、そのスペースから自分の中に入ってきた奴に対しては、それなりに大事にするんだけど、他の奴には超攻撃的な態度を取って中に入れさせない。でもね、三村さん。最初は何だコイツと思っても、実際に話してみたら実はスゲーいい奴だったっていうケースもあるんですよ。ところが、三村さんやキャームは、そういう機会を最初から潰しちゃってる。勿体無いですよね」 
三村「でも、最初はいい奴だと思ったけど、その内、ソイツの嫌なところがドンドン出てきたって時は……」 
ゲッツ「その時は単純に“テメー、もう近寄ってくるんじゃねえよ!!”って言って、遠ざければいいだけの話っスよ。そんなことを避けるために自分の入口を極端に狭くして、ホントはいい奴をガンガン逃がしちゃうよりは、最初の受け口を広く構えてた方がオレはいいと思いますけどね。ま、それも程度問題でしょうけど」 
三村「俺は納得いかないねっ」 
ゲッツ「だから疲れるんスよ。三村さん自身も、それに対応する奴らも」 
塚ポン「だから三村さんは友達が少ないんでしょうね」 
三村「放っとけっ、そんなもん!!」 

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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