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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

贈るピエール

 仕事や遊びなどで何度も接点のあるピエール瀧さん(以下「さん」は取る)が麻薬取締法違反の罪で起訴され、数日前に釈放された。
 いや、でも、ピエールらしかったね。世田谷の自宅を麻薬取締官に踏み込まれて、そこには麻薬が無かったのにピエールは開き直らずに白状しちゃってんだもの。しかも、警察署にしょっぴかれたら、20代の頃から麻薬やマリファナをやってたって、これまたバカ正直に答えててさ。
 しかも、思わず涙が出たのは静岡の実家のお父さんが、ピエールを助けたい一心で芸能レポーターたちのインタビューに「何をやっているんだ、っていうのはありますけど、年に何回かは子供を連れてウチに挨拶に来る、私にとってはイイ息子です」なんて正直に答えててさ。おまけに、ピエールの実家や自宅の周囲に住んでる人たちもピエールのことを聞かれると、誰もがいつもニコニコ挨拶してくれるホントにイイ方です、なんて答えてるしさ。も1つおまけに、他のタレントや文化人なんかも彼のことを悪く言う奴は、作家のナントカぐらいだったしね。
 つまり、オレは何が言いたいのかと言うと、彼はホント~~~にイイ奴なんスよ。いや、そんな抽象的なことを言っても意味ないね。じゃあ、簡単に彼との具体的な付き合いを紹介しとくね。

 オレとピエールが初めて会ったのは、今から18年前の2001年の某週刊誌でのインタビューだった。で、その時のインタビューが凄く盛り上がって、今度また一緒に何かやりましょうって彼に言われ、そのインタビューは終わった。で、その8ヵ月後ぐらいに映像作家&監督の中野浩之さんから電話が入って「ピエール瀧が今度短編映画の監督をやるんですけど、それにゲッツさんをUFOが見えるヤンキー役で主演で出したいって言ってるんですけど、どうですか?」と言ってきたのだ。
 で、ピエールは実質2日間でその短編ムービー「県道スター」を撮ったのだが、オレが「すいません、ウチの親父も出たいって言ってるんですが……」とうと「ブハハハ!! いいっスよ、出しちゃいましょう!」。また「友達にジョニーっていうガーナ人がいるんスけど、彼も何かの役で……」と言ったら「ガハハハ! ガーナ人ですかぁ。いいですね。じゃあ、その人は田んぼに落っこちる役で出しちゃいましょう」って答えがスグに返ってきてね。そう、今考えると無茶の言いっ放しだったが、ピエールは笑いながらソレを全部飲み込んでくれたのである。で、その時、オレの親父とピエールはすっかり意気投合して、その後、オレが脳出血を患って病院から退院した時も、彼は奥さんや子供を連れてオレの家まで見舞いに来てくれたのだ。

 また、ピエールが懇意にしているスタッフがいた千葉ロッテマリーンズの試合にも、オレと漫画家の天久くんを招待してくれたり、また、ある時は六本木で天久くんと3人で酒を飲み、そこにピエールは知り合いのキャバクラの娘を呼び、オレのことはフリーライターの「ハンバーグさん」、天久くんのことは「聖飢魔IIのギタリスト」と彼女に紹介したら、その娘は聖飢魔IIの大ファンだったらしく、「ええ~~~っ、ホントにあのバンドのギタリストなんですかあああっ!?」と天久くんに尋ねると、彼は落ち着いた感じで「どうも~~」なんて返しちゃってさ(笑)
 また、そういう遊び以外にも、例えば前出の「県道スター」に一瞬だけ出演したジョニーのミチヨさんという日本人妻がガンで亡くなったと聞くと、彼女の葬儀にピエールから大きな花が届くは、今までオレの本にも解説や帯文などを書いてくれたことも1度や2度じゃなかった。

 そう、オレ的には非の打ち所のない、とんでもなく有り難いっつーか、とにかく凄げぇイイ奴なのだ。そして、このオレと同じような印象を持っている者が芸能界、映画界、音楽界、出版界には多分、数百人はいるのだ。そう、もちろんピエールは頭が良いし、笑いや演技の才能も凄くあるのだが、その前に1人の人間としても途方もなく魅力的なのだ。
 もちろん、麻薬をやっていたことは良くない。それに対しての罰則は、これからピエールに降り注いでくるだろう。
 が、オレは次の2つだけはハッキリと言える。1つは、ピエールは違法薬物はもうやらない。なぜなら今回逮捕された時に彼が見せた、まるでタバコを覚えたての高校生が教師にそれを見つかって、職員室で詰め寄られた時に過去のことも正直に全部白状してしまうような彼本来の生真面目さ、それがこれからどんなに苦しくとも違法薬物をハネつけるはずである。

 もう1つ言えることは、今回の罪を償ったら、再びピエールにはそれなりの量の仕事がくるということ。つい先日、オレの大好きなショーケンこと、萩原健一が死んでしまったが、彼だって4回逮捕されているのだ。いや、決して逮捕されるのが格好いいって話ではなく、とにかく本当に才能や魅力のある奴に対しては、人々はそう簡単に手は離さないのだ。
 つーことで、彼はこんな言葉を掛けられるのは凄く嫌だとは思うが、2度とやらないようにあえて言っとく。



      頑張ってね、ピエール❤

 

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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