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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

大逆転試合!

 あれは、オレが30代半ばだった頃のこと……。

 その晩、オレはタイの首都バンコクにあるゴーゴーバーにいた。何でタイなんかにいたかというと、数日前に終わったベトナムの紀行本を書くための取材、それからクソ忙しい日本での日常生活に戻るために、オレと同行してベトナムに行っていたカメラマンのカモちゃん(サイバラの元夫)が持っていたバンコクのマンションの一室で2~3日ゆっくりしてから帰国しようということになったのだ。で、そのバンコクに着いたばかりの晩、カモとオレはソイカウボーイというゴーゴーバーのメッカの1つの街にある1軒の店でウィスキーを飲んでいた。すると……、 
「板谷くんて、オカマちゃんとは今まで1度もヤッたことねえだろ?」
 目の前のステージで半裸のオネーちゃん達がゆっくりとしたステップを踏む中、突然そんなことを言ってくるカモ。
「ヤッたことなんてねえよ。だって、オレは完全なノンケだもん」
 オレがそう答えると、カモは人を小馬鹿にしたような微笑みを浮かべた。そして、続いて次のようなことを話してきた。
「でもさぁ、板谷くんには物書きをやってんだろ。だったら1つでも多くのことを知っといた方がいいんだから、オカマちゃんとも1発ヤッとけよ」
「い、嫌だよっ」
「嫌じゃねえよ。これからもオカマちゃんのことを文章にする時、奴らのことを全然知らなくて、その内面を板谷くんの乏しい想像力で書くよりかは、1発ヤッて知っといた方がはるかにリアリティが出てくるじゃねえかよ」
「そんなもん出てこなくたっていいよっ」
「認めないよっ、そんなこと!」 
「何でそんなことをお前に認められなきゃなんないんだよっ!?」 
「そうやって板谷くんは、これからも偽物ライターになっていくんだな」 
「だから何だよっ、その偽物ライターって!? てか、別にオレはオカマとヤッたっていいけど、でも実際には、このオカマ大国のタイに来たって、ああ、コイツとならやってもいいって感じで下半身を直撃してくるオカマなんていねえんだよっ」
「言ったなっ、板谷くん! よしっ、ついてこいよ」 
 そう言ったかと思うと、そそくさと席が立ち上がるカモ。
「えっ……ど、どこに行くんだよ?」 
「いいから黙ってついてこい!」

 5分後、同じソイカウボーイの中にある別のゴーゴーバーに入るカモ。 
「おいっ、何で店を替えるんだよ? そんなことしたって………」
 オレの言葉が途中で止まっていた。そのゴーゴーバーの細長いステージで踊ってるオネーちゃん達、彼女らの美的レベルが今まで入ったゴーゴーバーの中でも格段に高いのである。 
「ほら、板谷くん。そんなとこに突っ立ってないで、早くここのテーブルに座れよ」
「えっ……あ、ああ」 
 そして、オレがテーブルに着いた後、2人分のアルコールの注文を済ませると、確信犯のような表情になって次のことを言ってくるカモ。 
「ここで踊ってるオネーちゃん達の9割はオカマだからな」 
「ええっ、そっ……そんなに多いの⁉」
「ああ、ここはオカマの殿堂みたいな店だからよ」
 そう言って笑う、このタイには3年前まで8年近く1人で住んでいたカモ。 
 オレは改めてステージの方に視線を向けると、そのままその視線をオネーちゃん達の足元に落としてみた。
(ホ、ホントだ……。どの女も異常に足がデカい) 
 そうなのである。オレも何回もタイに来たことがあるからわかるのだが、いくら厚化粧をして女を装っていてもオカマの足だけは大抵デカいので、そこをチェックすれば相手がオカマちゃんかそうじゃないかがわかるのだ。にしても何だよ、この店にいるオカマちゃんのレベルの高さは……。冗談抜きで日本のアイドルより全然キレイな奴が何人もいるのである。 

「おっ、どうやら決まったみてえだなぁ」
 数分後。ステージで踊っているあるオカマちゃんから視線が動かなくなっているオレを見て、愉快そうにそんな言葉を掛けてくるカモ。いや、視線が動かなくなるのも無理はなかった。オレのモロ好みの、あのアメリカの超有名ミュージシャンのプリンスのバンドに一時期パーカッション奏者として参加していたシーラ・Eという歌手。その彼女を更に洗練させたような美女が、さっきからオレを見ながらステージで腰をゆっくりと振っていたのである。
「あの女でいいんだな?」
 そう言いながら、MAXシーラ・Eのことを指さすカモ。
「あっ……う、うん」
 少しするとステージから下りてきたMAXシーラ・Eが、オレの脚の上に直接腰を下ろしてきた。オレは恥ずかしながら全身が痺れていた。そして、彼女から漂う安い石鹸のような香りでさえも、セクシーな宇宙人のフルーティな体臭のように感じている自分がいた。
「じゃあ板谷くん、とっとと俺のマンションに行こうぜ」
 そう言って、店のボーイに飲み代とオカマちゃんの連れ出し代を払うカモ。 
「ちょ、ちょっと待たんかいっ。カモちゃん、お前も誰か連れて行けよ!」
「えっ、何で?」 
「何でって……お前は、オレがHしてるところをどこかで見てる気かよっ? ふざけんじゃねえぞ、お前も誰か連れてけよっ!」 
「ったく、めんどくせえなぁ……。よし、じゃあ、お前。俺と一緒に来い!」
 そう言って、カモが適当に手首を掴んだオカマちゃんを見てみると、そこには顔面に20トンの水圧をかけられたようなピーターが……。なぁ、カモ。お前、ホントにそのオカマちゃんでいいのか? つーか、お前は自分自身に罰を与えたいのかよ……。

 その後、タクシーに乗ったオレたち4人は、夜の10時前にはカモのマンションに到着。 
「よしっ、じゃあ、乾杯~~~~っ!!」
 部屋に入ってから、まだ3分と経っちゃいないのに、居間のテーブルの周りに座りながらスコッチウイスキーで乾杯するオレたち。 
「じゃあ、板谷くん。俺は、このオネーちゃんと隣の部屋に行くから、お前たちはこの部屋でよろしくやってくれよ。あ、布団は、あの押入れの中に入ってるヤツを使っていいからな。じゃあ、また後で」
 そう言うとピーターの手を引いて、チャッチャと隣室に消えるカモ。
「じっ……じゃあ、は、始めようか?」
 そう言うと押入れから布団を出し、それをぎこちない仕草で敷き始めるオレ。そして、視線をシーラ・Eに移してみると
「うわっ!!」 
 ナント、シーラ・Eは既に総ての衣服を脱いでいた。胸を見ると豊胸手術は済んでおり、続いて下半身を観察したところ、もちろんアレもカットされていた。
「えっ……な、何やってんの?」
 その後、自分の股間に手を突っ込み、何かをまさぐるような仕草をするシーラ・E。 
「うわわわっ!!」
 次の間、そのまさぐっていた手でマ○コの中から取り出したと思われるモノをテーブルの上に置き、その右手の先を何度もスコッチウイスキーが入ったグラスの中に入れる シーラ・E。これは後でわかったことなのだが、シーラ・Eがマ○コの中から取り出したのは5~6センチの木の棒で、何でそんなモノを入れておくのかと言うと、人間の体というのは元に戻ろうとする機能がある。そう、つまり、手術で股間に穴を開けて人口的なマ〇コを作っても、そこをそのままにしてると日に日に塞がってきてしまうので、普段は木の棒などを入れておいて、穴を塞がないようにしているのだ。また、何でシーラ・Eは右手の先を何度もスコッチウィスキーのグラスの中に入れていたかというと、それはアルコールによってマ○コの中を消毒するためで、つまり、いくら手術が済んでいるとはいえ、オカマちゃんはオカマちゃんなりに自分の体には色々気を遣わなければならないのだ。 

(じゃあ、いくからな、シーラ・E!)
 オレはシーラ・Eの体に覆い被さると、乳などは全く攻めずに、いきなりアソコにチンコを挿入した。
(あ、穴が浅い!)
 が、ここまできたらそんなことで行為を止めることは出来ず、オレは無中で腰を振り、数分後には板谷汁をシーラ・Eの中に発射させていた。 
「板谷くぅ~ん、もう終わったぁ~~?」 
 突然、隣室からそんな声が聞こえた。何っていう男だと思った。カモは、まるでオレの行為をドコかで覗き込んでいたかのように、オレがイッてから、まだ10秒と経たない内にそんな声を掛けてきたのである。
 その後、早々にタクシー代を渡してシーラ・Eとピーターを帰らせたカモは、再び居間のテーブルの前に座りながらスコッチウイスキーをチビチビと飲み始めた。そして……、
「で、板谷くんはヤッたのか?」
 そんなことをニヤつきながら改めて訊いてくるカモ。
「そりゃヤッたさっ。カモちゃん、お前だってヤッたんだろ?」
「いや、俺はヤッてねえよ」
「……はぁ⁉ じゃあ、何であのピーターがズッコケたような顔したオカマをココまで連れてきたんだよっ!?」 
「いや、板谷くんがお前も誰か連れ行けって言うからさ」
「なっ………」 
「そぉ~か。板谷くんはヤッたのかぁ~。イッた瞬間、どんな声を上げたの?」
 オレにそんなことを訊きながら、楽しそうに笑ってウイスキーを飲むカモ。そう、結局コイツは、オレとオカマちゃんとをSEXさせ、後でそのことを肴に何度も笑うために、あんな小芝居を打ったのである。
(この糞ガキ~~っ、いつかオレが思いっきり逆に笑ってやるうううっ!!) 
 が、その逆に笑ってやる日は意外にも早く、次の日の朝にきたのである。 
「痛ててててててててっ……。な、何だよ。腹が痛くて痙攣しっ放しだよ……。あ、痛てててててててててててっ!!」
 結局カモはハンパない腹痛で、日本に帰るまでの嘔吐と下痢を繰り返していたが、オレにはその原因はわかっていた。そう、カモが前の晩、笑いなからチビチビ飲んでいたスコッチ・ウイスキーは、あのシーラ・Eが何度もグラスの中に手を突っ込んで人口的マ〇コを消毒していたものだったのである。ぐぅわはははははははははははっ!! ざまあみやがれ、カモ。 


 でも、そんなカモも、そのベトナム取材から7~8年後に肝臓がんを患って、42の若さで死んでしまったんだよなぁ……。カモ、オレもサイバラもそう長くないうちにソッチに行くから、もう少しだけ待っててくれな(笑)

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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