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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

才能

 2015年(今年)、オレが原作を書いた小説「メタボロ」「ズタボロ」が映画「ズタボロ」として劇場公開された。
 ちなみに同作品は続編で、1発目に撮られた作品は「ワルボロ」という原作通りのタイトルで、2007年に劇場公開された。で、当時、その映画「ワルボロ」で話題を集めたのが“松田翔太初主演”という触れ込みだったが、その「ワルボロ」の公開が終わった時にオレは改めて思ったことがある。
 同作品のマドンナ役には、これまた映画初デビューの新垣結衣ちゃんがついていた。この当時、結衣ちゃんは19歳で既にドラマやCM等でもの凄く話題になっていたが、正直オレとしては彼女を見ても何も感じなかった。で、オレは「ワルボロ」公開時に結衣ちゃんと簡単な対談をする仕事があり、その時に1つだけ彼女に前々から訊きたかった質問を対談が始まる前にしてみた。

「あのさぁ~、オレの原作『ワルボロ』って読んでくれたの?」
 と、結衣ちゃんは表情を少し強張らせながら次のように答えた。
「すいません……じ、実は1回も読んでないんです」
「ああ、そうなんだ。いや……別にいいんだけどね(笑)」
 そう答えたが、少しガッカリしている自分がいた。

 しかし、それから日が経つにつれ、オレの中である想いが強くなっていった。個人的な話で恐縮だが映画「ワルボロ」を何度も観ると、この中で特にイイ演技をしている役者が2人いると思った。1人はオレの親友ヤッコ役を演じた福士誠治くん、そしてもう1人がマドンナ役の新垣結衣ちゃんだった。そう、原作を読んでくれなかった新垣結衣ちゃんである。
 が、彼女の演技を見れば見るほど、この新人の新垣結衣がオレの中学時代の憧れのマドンナの山田に見えてくるのである。いや、彼女の演技には特に他人より抜きん出てるところはないし、凄く印象に残ったシーンもない。ただ、何と言っていいのかわからないが、とにかく上手いのだ。自然とその役になりきっているのである。

 で、これ以降の彼女は言わずと知れて映画やドラマで活躍を続けているが、その殆どを観てないにも関わらず、オレは彼女が売れ続けているのは当然と言えるのだ。なぜなら彼女は突出した部分はないが、本当に演技の才能があるからである。


 先日、数年ぶりに映画「ワルボロ」をDVDで見返してて、改めてそう思った。

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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