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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

うどんのディズニーランド香川(前編)

 千葉県の舞浜にある東京ディズニーランドに集う奴ら。
 オレにも、この日本で年に数回楽しみにディズニーランドがある。それも「うどん」のディズニーランド。そう、日本で1番小さい香川県、そこ全部だ。

 いや、オレも50年ぐらい生きてんでしょ。で、今まで、ほら、こんなデブな体格をしてるだけあって、それなりにイロイロなモノを各地で食べてきたわけっスよ。で、その最終局面に近づいてきて、ようやく行き着いたのが讃岐うどんなんですわ。
 いや、オレは40代の中頃までは、麺類の中でもうどんは一番どうでもいい食べものだったの。麺類っていったら、蕎麦かラーメンだった。ま、でも、そうは言っても、うどんだってそれなりには食べてきたよ。秋田の稲庭うどん、群馬の水沢うどん、東京郊外の武蔵野うどん、三重の伊勢うどん、長崎の五島うどんetc。でも、その中でも月に1回ぐらい食べたいと思うのは伊勢うどんぐらいしかなくてね。ところが、伊勢うどんは東京でもほとんど売ってないから、別にうどんなんて何かのついででタイミングが合ったら食べればいいもの…という感覚しかなかった。

 えっ、讃岐うどん? うん、だから最初は全く興味が無くてね。ほら、今から10年ぐらい前に「はなまるうどん」っていう讃岐うどんのチェーン店が東京に進出してきたでしょ。で、オレも何度か食ったんだけど、特に旨いとも思わなくてさ。そもそも讃岐うどんって何県が本場だってこともわからなくて、また別にわかりたくてなかったから、それ以来ボキの頭の中では讃岐うどんは消去されてたわけっスよ。
 ところが、今から4年ぐらい前。たまたま自分の車で九州まで取材に行って、その帰りに途中の香川県に寄ったんですわ。そしたら、とにかくうどん屋がバコバコあってね。で、その時初めて(ああ、讃岐うどんっていうのは四国の香川県が本場なんだぁ……)ってことを知ってさ。で、適当にソコソコ混んでた「源内」っていう店に入ってみたんですよ。
 いゃあ~、ビックラこきましたよ。旨いんです。メチャメチャ旨いんですよ! 麺も出汁も天プラも!! ちなみに、あと何軒か別の店に寄ってみたけど、これまたビックリするほど旨くてね。

 で、それから数ヵ月後。またまた四国の近くに用事があったんで、再び香川まで足を伸ばして新たなうどん屋に入ってみたんだけど、どの店もその店なりの名物うどんがあって、その釜たまうどんとか、ぶっかけうどんとか、冷天おろしうどんとか、イカ天ざるうどんとか、いちいち旨いわけっスよ。
 てかね、日本の各県にも、やれ、お好み焼きが旨いとか、餃子や皿うどんが絶品だとか、そういう食べ物のご当地があるでしょ。でも、現地に行って食べ歩いてみると本当に旨い、いわゆる本物の店って大抵1~2軒しかないわけっスよ。ところが、この香川の讃岐うどんってヤツは、行く店行く店笑っちゃうぐらい旨いうどんがあってね。
 何だよ、香川県っていうのは、うどんの麺を打つ時に使う水が特別にいいのか?と思ったんだけど、いやいや香川は夏になると頻繁に水不足が発生するので、県内のアチコチに溜め池がある始末で、けして良い水が豊富にあるわけじゃないんスよ。で、じゃあ、出汁を作る時に使うダシがイイのかと思ったんだけど、確かにカツオや昆布の他にも瀬戸内海では煮干やイリコが大量に獲れるんだけど、冷静に考えればソレらは東京にも入ってきてるわけだし、その他には特別なモノを使ってる様子もないんですわ。
 どうしてこの香川県には、こんなに旨いうどん屋がココまで沢山あるんだろう……。
 オレは、そんな疑問の明確な答えを見つけるため、数ヵ月後に今度は計8日間に渡って香川に滞在し、1日4軒、合計で30軒以上のうどん屋で讃岐うどんを食いまくることにした。


 そして、ソコで奇妙な怪物が、オレをフルスロットルで待っていたのである……。以下、次号で。

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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