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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

まるや三バカ親父愚論会 第8夜

 

 今から12年前、埼玉県富士見市で串カツ居酒屋『まるや商店』を始めた塚ポン(51)。その居酒屋があまりにも居心地が良く、離婚を機に第2の人生を送るために、そのまるや商店の近くに引っ越してきたオレ(62)。そして、元々そのまるや商店の近くに住んでいて、昼間は自営業で雑誌のデザインをやり、夜は必ずその息抜きにやってくる三村さん(68)。まるやのカウンターでは、いつもこの3人が揃って、ポンコツなムダ話を交わしている。ちなみに今夜は、ちょっと危ない雰囲気に!? 
 
三村「しかし、塚ポンのデブも止まらねえなぁ~。お前、今、何キロあるんだよ?」 
塚ポン「……94キロぐらいっスかねぇ」 
三村「身長が164センチで94キロもあるのかぁ! ヤバいぞ、お前。そして、もっとヤバいのがお前の息子のアキトで、あいつは今、何キロになった?」 
塚ポン「つい1週間ぐらい前に量ったら130キロありましたねぇ」 
三村「130キロ!? おい、奴が大学を卒業したら相撲部屋にでも入れるのかよ!?」 
塚ポン「あははは」 
三村「あははじゃねえよ。お前ら親子、そのうち心臓が止まってホントに死んじまうぞ」 
塚ポン「いや、でもボクは、先月からシーパップをやり始めたんで大丈夫ですよ」 
三村 「えっ、シーパップって、あの寝てる時に酸素吸入器みたいのを顔に装着するやつ!?」 
塚ポン「まぁ、そうですねぇ」 
三村「つーか、何で病人でもねえのに、そんな酸素吸入器みたいなのを顔に付けてんだよっ?」 
塚ポン「いや、ボクみたいな太った奴は、寝てる時に急にイビキが止まって、かなりの間、無呼吸になったりして、それで死んじゃう奴もいるから、それでシーパップって機械を付けて寝るんですよ」 
三村「おい、呆れたなぁ………。つーか、ゲッちゃん。なに黙ってんだよ? お前も何か言ってやれよ、このデブの大将にっ」 
ゲッツ板谷(以下、ゲッツ)「いや、ウチにも明日、そのシーパップが届くんですよ」
三村「はぁ!? 何言ってんのお前は?」 
ゲッツ「いや、オレの友達に看護師をやってる女がいましてね。この前、LINEでやり取りしてる時に、そのシーパップの話になって、オレがバカにしてたら『アンタみたいなデブが60を過ぎて、そのシーパップをやらなかったらホントに早く死んじゃうからね! ホント、それを付ける人と付けない人では寿命が8~10年違うんだよ』なんて言ってくるんスよ。で、先月、ホントに自分はシーパップが必要かどうか、いつも通ってる病院から試験キットを送ってもらって、2日間その簡易シーパップを付けて寝たんですよ。それでそれを大阪の病院に送って調べてもらったら、オレも寝てる時に無呼吸状態になってることがメチャメチャ多いらしくて、結局明日からオレもシーパップを付けて寝ることになったんですよ」 
三村「……………」
ゲッツ「三村さん、聞いてます、オレの話?」  
三村「てか、塚ポンにゲッツ。お前ら、俺に内緒でそんなもんに頼りやがって」 
ゲッツ「いや、だから三村さんもやりましょうよ、シーパップ。三村さんだって全体的には太ってるわけじゃないけど、その腹回りだけは毎晩大酒を飲んでるから餓鬼みたいじゃないっスか。始めましょう、シーパップ」
三村「やらねえよっ、そんなふざけたもんは! そこまでして長生きしたくねえわ」 
塚ポン「つーか、1番自分の命を心配してんのは三村さんじゃないですか。あ~あ、俺なんか、あと10年から15年ぐらいしか生きらんねえよ、なんていつも言ってるじゃないっスか」 
ゲッツ「えっ、三村さんってあと15年も生きると思ってるんスか!?」 
三村「なっ………」 
ゲッツ「シーパップをやらなかったら、今年か来年中には……」 
三村「ふ、ふざけたこと言ってんじゃねえよ! 俺だってまだ自分の将来が」 

ゲッツ「この前、オレや竹ちゃんと一緒にわざわざ福島県郡山市まで、昔好きだった女の人に会いに行って。そんで、奇跡的にその人と45年ぶりに再会出来て、しかも、その人は離婚か何かして現在は1人身で、その人と三村さんはLINE交換までして、それから5ヵ月も経ってるのに今は三村さんの方からは殆どLINEも入れてない、その三村さんの将来って一体何なんスかあああああっ!?」
三村「いや、それは……」 
ゲッツ「わかってますよっ。この45年間であまりにも相手の女性が変わっちゃったから、全然テンションが上がらないんでしょ! じゃあ、逆に訊きますけど、三村さんだって餓鬼みたいな腹回りして、そんなギョロ眼の白髪鬼みたくなっちゃってるんスよっ。つまり、お互い様じゃないっスか! オレが三村さんなら、とっくの昔に埼玉の自分のマンションに呼んで、今頃ラブラブ生活の真っ最中ですよ!!」 
三村「いや、男と女っていうのは、そんな簡単なものじゃ……」
ゲッツ「って言うんですよ、面倒臭い男は。じゃあ、ちょっと話は変わりますけど、三村さんは荻原健一、つまり、ショーケンのことが大好きなんでしょ。いつもドラマ『傷だらけの天使』の話とかしてるし。で、オレはショーケンが出演してる映画やドラマのDVDを死ぬほど持ってるから、三村さんに貸してあげましょうか?って言ってるじゃないっスか。ところが、三村さんの家のDVDレコーダーは前から壊れてるから、DVDは観られないって答えを返してくるでしょ?」 
三村「まぁな…」
ゲッツ「で、オレ、その度に『じゃあ、新しいDVDレコーダーを買って下さいよ』って言うじゃないですか。三村さんは今でも20台近くの一眼レフのカメラを持ってるのに、その上新しいカメラをガンガン買い足してるから、そう考えれば、DVDレコーダーなんで安いやつ買えば2~3万で買えますからって、いつも言ってますよねえ」 
三村「あ、ああ」 
ゲッツ「オレ、まるやで三村さんと4年ぐらい前から週に2~3回の割合で飲んでて、三村さんがショーケンは最高だよ!って口にする度に、だから三村さんがまだ観てないショーケンのDVDを借してあげますから、早くDVDレコーダーを買って下さいよって言うでしょ。でも、絶対買わない。……どうしてなんスか?」  
三村「いや、買わなきゃいけないなとは思ってるんだけどさ……」 
ゲッツ「てか、三村さんはコッチが盛り上げようとしても、そっちには絶対いかない。だから塚ポンとかに三村さんは友達が全然いないなんて言われるんスよ!」 
三村「う、うるせーな」 
ゲッツ「つまり、三村さんはこのまるやのカウンターで飲んでる時だけ自分のペースで楽しく会話が出来て、あと1~2ヵ月に1回ぐらいのペースで塚ポンやオレと『宿場食堂』とか昔通ってた大塚の飲み屋で酒を飲んでイイ気分になれればいいんでしょ?」 
三村「そんなことは……」
ゲッツ「で、オレもならそれでもいいやって、塚ポンや竹ちゃんなんかとグルメ旅に出掛けて、そのことをXに書くでしょ。そうするとソレを読んだ三村さんは『いつもおーらだけでウメーもん食いに行きやがって!』なんて言うけど、じゃあ今度一緒に行きましょうよ。何日がいいですか?って訊いても大体『いや、俺も今月は仕事が忙しくてよぉ』なんて返してくるじゃないッスか。でも、忙しいって言ったって、アメリカの大統領じゃないんだから、ちょっと工夫すれば町中華屋とか天ぷら屋に行く時間ぐらいはスグに作れるはずなんスよ」 
三村「じ、じゃあ放っとけよっ、俺のことなんか」 
ゲッツ「いや、勿論普通の奴ならそんな三村さんからとっとと去ってくんだけど、オレは去らない」 
三村「な、何でだよっ!?」 
ゲッツ「なぜなら三村さんの中味は、ソフトキャームだから」 
三村「ソ、ソフトキャーム!?」
ゲッツ「そう、もう7年近く前に死んだキャームは、ハンパなく面倒臭い性格をしてて。ま、それは発達障害とアスペルガー症候群が交じった精神構造をしてたからなんですけどね。とにかく自分の個人的な感情を異常に優先するところがキャームに似てるんスよ、三村さんは」 
三村「そ、そんなことは……」 
ゲッツ「だけど2人は根本的なところが違ってね。例えば、あるレストランに行って、その店の料理が不味かった場合、三村さんは一応全部食べて、店を出てから『なんだ、あのクソマズい料理は!?』って文句を言うでしょ。でも、キャームだったら、二ロぐらい食べた時点で『コーちゃん、俺、外でタバコ吸ってるわ』って言って、とっとと退店しちゃうんですよ。つまり、そのぐらいの差があるから、キャームに比べれば三村さんなんて可愛いもんなんですよ、ええ」 
三村「こ、この野郎……」
ゲッツ「だから三村さん、これからもココでそれなりに楽しく話して、あとは1~2ヵ月に1回ぐらい三村さんの好きな別の居酒屋や町中華に行きましょうよ。こっちもそれで充分ですから」 
三村「さっきから黙って聞いてりゃ、好き勝手なことをホザきやがって!! 冗談じゃねえぞっ」
塚ポン「つーことで、現場からは以上でぇ~す!」 
三村・ゲッツ「って、お前は台風レポーターかあああっ!?」 

 

 

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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