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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

どっちがいいんだかね

 昔からアル中に囲まれて生きてきた。
 特にオフクロ側の家族が酷かった。実の父親は戦争から帰ってくると浴びるように酒を飲み、52歳で死亡。オフクロの実兄もハンパない酷いアル中で、わずか39歳の時に死亡。オフクロの実弟もアル中で、まぁ、この人はアル中の割には去年の71歳まで生きたが、体はボロボロだった。

 それからウチの親父のケンちゃん、彼はアル中というわけではなかったが、とにかく何歳になっても酒の飲み方がわからず、一旦酒を飲み始めると、もうグデングデンに酔っ払って、必ず周囲の人間に迷惑をかけた。で、これだけでも、もうアル中は勘弁してくれとなるのだが、オレの元仕事仲間で42歳の時に他界してしまったサイバラの元夫のカモちゃん、コイツの酒癖もホントに悪かった。てか、この人は取材でオレと海外に行ってる時は、とにかく朝から晩まで酒を飲み、夜、寝る前になると隣のベッドで歯ぎしりや寝言は当たり前で、そればかりか部屋の中を寝惚けて歩き回るは、突然吠えるはで、とにかくアル中界の若き首位打者のような男だった。
 
 で、こういう面々に言えること。それは大抵が肝臓を壊して長生きしないのである。

 が、現在、そういう人たちが次々とあの世に召されていったので、今、オレの周りは割と静かなのだが、その代わりに躁うつ病、パニック症候群、統合失調症などを患っている人たちが多く、予想でしかないのだが全体の10分の1ぐらいは、こういう病気に悩まされているのではないかと思う。

 まぁ、こういう人たちが読者になってくれる訳は最近、ハッキリとわかってきた。落ち込んだり生きる気力を失いつつあっても、オレが書いた「板谷バカ三代」などを読めば、家族がこんなバカばっかりなのに、何でこの家のかろうじてフツーの人たちは、こんなに明るくて元気なんだ!?と不思議になり、その結果、まぁ、この一家に比べればウチはまだマトモだと思って、躁うつ病などの病気が回復の方向へと向かうパターンが多いのだろう。

 アルコール中毒と精神疾患、どっちがいいんだろ………。てか、どっちがマシなのか?

 オレは元々は能天気な人間である。しかも、6年前に脳出血を患って見事社会に復帰できた今は正直、人生のオマケのような期間として生きているから変な力みが抜けて、自分は何をやると本当に楽しめるかもわかってきたから、素直にそのプールに飛び込むことができる。だから、今は毎日がホントに楽しいのだ。

 が、やっぱしウチのオフクロがいなくなったのは、板谷家には大きすぎるなぁ……。

 オフクロが死んでから3年後には、ケンちゃんが不摂生な生活で大きな脳梗塞をやってしまい、もう現在では昔の面影は全くないほどやつれている。また、オレの弟のセージもオフクロが死んで5年間ぐらいは真面目に仕事をしてたけど、1年前に凧の糸が切れるように急に仕事を辞めちゃってね。それから3ヵ月間は嫁と一緒にタイに遊びに行っていて、帰ってきたら毎日昼過ぎまで寝てて、今は相も変わらず1人でアメリカ&メキシコに遊びに行っているという有り様である。そう、鉄の監視役がいなくなった途端、板谷家の土台がグラついてきたのだ。

 とまぁ、現在の板谷家はそんな状況なのだが、でも、オレ個人は昔みたいにバカみたいに仕事を量産しているわけじゃなく、とにかくイロイロな面で余裕があるのでホントに楽しいのだ。

 が、このままじゃ、日本は益々ヤバくなっていくだろう……。

 40~60代も仕事で大変だけど、ちゃんとした国。一方、40~60代になったら決して無理はしないが、将来的に不安な国。

 さっきと同じ悩みなんだけど、どっちがいいのかなぁ?

 ま、現在は子供がいない人が益々増えているから、日本の将来なんか心配するより、残りの人生をいかに大変な思いをせずに楽しく過ごすことしか考えていない人も多いことだろう。でも、今年はオレ、とにかく自分が書いたモノで少しでも他の人たちが笑って頑張れるよう、結構マジに仕事をします!


 冷静に考えると、「どっちがいいのか」なんて言っている場合じゃないよ。今の日本は。

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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