MENU

ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

半世紀

 先日、50歳の誕生日を迎えた。
 当日オレは、もう2週間前ぐらいからタレントの上原さくらちゃんと八王子にある「にんにくや」というラーメン屋に行く約束をしており、その日の夕刻の5時頃、予定通りにさくらちゃんがオレんちにやってきた。ところが、である。
「板谷さん。立川にパエリアが美味しい店があるみたいだから、今日はソコで食事しましょうよ、ね」
(いやいや、さくらちゃん。き、今日はオレが「にんにくや」っていう旨いラーメン屋に案内することになってんだから……)
「で、その店の住所をココに書いてきたから、後で板谷さんの車のナビに打ち込んでくださいね」
(いや、だから………まっ、いいかぁ……)

 で、夕方の6時に予約したというので、5時半にオレの車にさくらちゃんとオレの中学2年になる息子を乗せて立川の北口へと向かった。にしても、その車に乗っている間、助手席のさくらちゃんはズーーッとケータイでメールをしており、ま、付き合いも広いだろうからいろいろと連絡もあるんだなぁ~とオレは思っていた。

「あっ、このビルの3階にある店ですよ!」
 車を100円パーキングに止めた後、50メートルも歩かないうちに、そのパエリアが旨いというイタ飯屋の看板を発見するさくらちゃん。で、エレベータで3階まで上がり、さくらちゃんが迎えに出てきた店員に自分の名前を告げると、スグに広い店の1番奥にある敷居に囲われた10畳ぐらいのスペースに通されるオレ達。
(おい、オレたちは3人しかいねえのに、こんなバカ広いスペースを使っていいのかよっ?)

 そう思いながらも、部屋のド真ん中に置いてある細長いテーブルを見ると、なぜかその上に蝋人形の顔が4つ並んでいて、おい……何じゃいっ、コレ!?と思ったら、いきなりその中の1つの口が動いて「コーちゃん、50歳の誕生日おめでとおおお~~~~~っ!!」という言葉を吐き出したのである。つーか、その蝋人形だと思っていたのは実はオレの友人たちで、その中のスキンヘッドにしている野澤さんという先輩がそんな言葉を掛けてきたのだ。
 そして、ポカ~ンと口を開けたままになっているオレを見て、手を叩いて爆笑してるさくらちゃん。そう、コレは彼女が仕掛けたサプライズパーティだったのである……。

 その後、さらに数分ほど遅れるようにしてキャーム、漫画家の沖田X華、東映のスガヤさんが3人ともドヤンキーな格好で現れて、オレはそれにも呆気に取られ、最後は今は平日の夜だというのに静岡に住んでるキョージュという予備校時代の友達もポッコリ現れて、いや、確かに嬉しかったんだけど、その反面、おい、コイツらは今日どうやって家に帰るのか!? なんていう心配をしている自分がいたのである。

 さらにその後、オレたち計14名は店を移って、今度はこの日のためにオレに手紙を書いてきたという面々が、1人ずつオレの前でソレを読み上げることになった。1番最初は弟のセージ、続いてセージの嫁のミカ。それから、八王子の10コ下の後輩のシンヤくんが読み、その後にさくらちゃんが続き、とにかくオレはその照れ臭さにグイグイ首を締められる様な思いだった。そして最後の最後にオレの息子が手紙を持って俺の前に立ったが、彼は何の前触れもなくその手紙を真っ二つに破いたのである。そして……、
「いや、手紙は書くには書いたけど、もう面倒臭いからこのまま口で言っちゃうとさぁ~。お父さんには、もっと早く俺を生んで欲しかったよっ」
(つーか、オレは生めないけどな……)
「っていうか、お父さんは、もう50歳でしょ? 50歳っていったら、あと20年ぐらいで死んじゃうわけじゃん。……せ、せっかく仲良くなったのに、そんな短い時間で別れなきゃならないのかと思うと……な、なんかさ……」
(おいっ、泣いとるのか、コイツ……!?)

「だ、だから……も、もう少し早く生んで欲しかったよ。……おしまい!!」

 気がつくと、オレの目からもポロポロと涙が落ちていた。いやぁ~、まさか今日、自分のガキにこんなことを言われるとは思ってなくて、で、この時つくづく思ったけど、血の繋がった肉親からの真剣な一言っていうのは心にバビョーン!!とくるね。いや、まいった……。

 で、さらにその後、会はカラオケタイムに入り、歌の上手いハッチャキやさくらちゃん、そして、プロ以上に上手い音楽プロデューサーをやってる野澤さんが順番で歌ってくれたんだけど、意表を突いてウチのガキも『進撃の巨人』の歌なんかを熱唱し始めちゃってさ。でも、やっぱしオレの息子だから下手なのである。ところが、1曲歌ったら気分がスッカリ良くなっちゃったらしくて、結局は「おい、クソガキ!! お前、まだ歌うんかいいいっ!?」っていうぐらい歌い続けてました。



 つーことで、ボキの50歳の誕生日はこんな感じだったっス。以上。

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

閉じる