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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

ああ、息子よ

 まぁ、オレっていえば、この体を見てもわかる通り、兎にも角にも食いしん坊でさ。
 和食、洋食、中華、イタリアンetcと、とにかく旨いモノを食おうと、暇さえあればアッチコッチ動き回ってんだけどね。ところが、ウチのガキときたら、オレがわざわざ食いに行くモノとか、オレが腕を振るう料理とかには殆ど興味が無くてさ。てか、オレと一緒のモノを食ってれば、大人になる頃には完全なグルメになれるのによ。それをコンビニでわざわざ弁当を買ってきたり、いや、ホントに勿体無い奴なんスよ。

 ところが、2年前の18になった頃からかなぁ……。3日~14日ぐらいの周期で、ウチの坊主は集中して同じものばかりを食べるようになってさ。例えば、スパゲッティをコンビニで買ってくるようになったと思うと、オレが買い物に出掛ける時には「スパゲッティボロネーゼのソースを買ってきてくんない?」とか言ってきて、とにかくソレばっかりを集中して食べる。そして、何日かして飽きたら、また次のメニューに行くってことを繰り返しててね。そのウチの息子の流行が面白く感じてきて、その流れをオレはメモ帳につけるようにしたんスよ。ちなみに、奴のこの2年間の食べ物の趣味の変化は以下の通り。

◎麻婆豆腐(全く辛くないやつ)。
◎紫蘇の葉(細かく切ってタレの上に浮かべたり、天ぷらにしたり)。
◎味噌汁(しかも赤味噌のみ)。
◎永谷園のお吸い物。
◎紅生姜。
◎小さなパックに入ったキムチ(大きな容器に入ったキムチは一切食べない)。
◎スパゲッティポロネーゼ(これには最長で丸々1カ月ハマっていた)。
◎カンパン(そう、昔、何も食べるものが無かった時代に多くの人が食べて飢えをしのいでいた、あのカンパン)。
◎鶏モモ肉のソテー。
◎ガリ(寿司屋で出てくるガリ。あれをとにかくガリガリ食べてた)。
◎缶詰のホテイの焼き鳥。
◎再び紅生姜。
◎野菜ジュース。
◎缶詰の鶏むね肉。
◎フリーズドライの味噌汁。
◎トースト(オレが買ってくる食パンにバターを塗って焼いて食べてた)。
◎再び麻婆豆腐(第1次ブームの時は木綿豆腐を使っていたが、第2次ブームの今回は絹ごし豆腐)。
◎スパゲッティペペロンチーノ(このブームも長くて1カ月近くハマっていた)。
◎豚の生姜焼き(オレに作り方を質問してきて、自分で作っていた)
◎無印カレー(バターチキン、プラウンマサラ、牛ばら肉、トマトのキーマとか色々食べてた)
◎大袋に沢山入った味噌汁パック。
◎スーパーで売ってる1人鍋(ちゃんこが好きな模様)。
◎すき焼き風ふりかけ。
◎肉まん(真っ二つに割って、ウースターソースをかけて食べてた。オレと食べ方が同じで少しビックリ)。
◎オレが千葉の道の駅で買ってきた「鰹と生姜のスープ」のもとで作ったスープ。
◎オレが栃木で買ってきた餃子。

 とまぁ、こんな感じでね。あと、流行に関係なく頻繁に食べているのはカップヌードル(カレー)、ポテロング(お菓子)、フライドポテト、マクドナルドのハンバーガーとポテト、銀だこのタコヤキ、吉野家の牛丼ってとこでね。
 で、この原稿を書いてて改めて気づいたんだけど、オレとウチのガキの好みって大体が一緒やん……。ま、オレの場合、さすがに56年も生きてるから、その1つ1つのメニューを更に極めて、もっと美味しいモノを食ってるんだけど、わかりましたよ。
 つまり、ウチの息子はいきなりその完成形を提示しても、まだそれらの基礎を味わってないから、その完成形が旨いってことがわからなくてね。で、今は自分なりに色々なモノを味わってる最中で、これから自分で金を稼いでより美味しいモノを食べる段階になった時に、初めて(ああ、ウチの親父はホントに美味しいモノを頻繁に食べていたんだなぁ……)ってことが分かるんだよ、きっと。



 オレ、アイツがそうなるまで生きてられるといいんだけどねぇ(笑)。

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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