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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

答えて、陳建一さん!

 はい、今回はとびきり短いよぉ~。

 最近、オレは混迷していることがある。今回はそれを説明しよう。
 1999年4月。オレの住んでいる立川市、その駅の南側に大きなビルが出来た。名称は「グランデュオ」。そして、その南口側初の駅ビルの売りになったのが、レストラン街の7階全部が中華料理店しか入ってないという“立川中華街”だった。店の数は20店舗近くあり、当時、この駅ビルを訪れた大半の人がこの立川中華街を目指してきたのである。
 その中でもダントツに人気があった店が当時、フジテレビの深夜にやっていた『料理の鉄人』で、鉄人役の1人を任されていた陳建一が出店した「陳建一麻婆豆腐店」だった。同店の麻婆豆腐は辛味も効いていて、また、オレのような大食漢のためにも麻婆豆腐セットに付いているライスとスープがお代わり自由となっていた。しかも、値段も税込で1050円だったので、オレも月に1~2回は通うようになっていたのである。
 ところが、立川中華街オープンから12年が経った2011年の3月、客の不入りにより立川中華街が閉店してしまったのだ。いや、実はオレもその頃には全然立川中華街を訪れなくなっていた。理由は、陳建一の麻婆豆腐店以外には、あまり美味しいと思える店が無く、大好きだったフカヒレ飯を出す「筑紫楼」が撤退してしまってからは足を踏み入れることすら無くなっていた。さらにオレは、美味しい麻婆豆腐作りに必要不可欠な花山椒という香辛料を入手出来るようになっていたので、麻婆豆腐は自分で作るようになっていたのだ。

 で、それから4年ほど経った、ある昼過ぎ。立川駅近くのサ店で打ち合わせを終えたオレは、ふと陳建一麻婆豆腐店のことが気になって久々にグランデュオの7階に行ったところ、位置は変わっていたが存在していたのである、陳建一麻婆豆腐店が!
 オレは相変わらず混んでいた同店に入り、そして迷わず麻婆豆腐セットを注文。で、食べてみたところ、いや、これがまた改めて旨いと思ったのである。特に気に入ったのが、昔は全く気にしていなかったのだが、出された麻婆豆腐に入っている豆腐が形がほとんど崩れず、そのまま大きな形で入っていて、またそれが美味しかったのだ。
(ああ、そう言えば昔、目の前の厨房内で料理人がフライパンの中で麻婆ソースにカットされた豆腐を絡ませてる時、その1つ1つの豆腐の形が崩れないように、まるで小動物の赤ちゃんでも扱うような丁寧さでかき混ぜていたよなぁ~)
 家に帰ってそんなことを思っていると、また陳建一麻婆豆腐店に行きたくなり、それからは年に3~4回は同店に行くようになった。

 ところが、つい1年ちょっと前。その日も陳建一麻婆豆腐店のテーブルに座り、料理の到着を今か今かと待っていたら、あろうことか、豆腐がメタメタに細かくなった麻婆豆腐がテーブルの上に乗ったのである。……いや、その日は何も言わず、その麻婆豆腐を食べて帰りましたよ。そう、その日はたまたま見習い中の料理人が作った麻婆豆腐で、焦ってかき混ぜたか何かして、豆腐の形をメタメタに崩してしまったんだろう。で、オレも、もう50代の半ばだ。そのくらいのことは許してやろうじゃないか。
 で、つい2ヶ月前。再びオレはグランデュオの中に入っている陳建一麻婆豆腐店に入り、麻婆豆腐セットを注文したところ、うぉいいいっ、この間ほどじゃないにしろ、やっぱし豆腐が派手な崩れ方をしてんじゃねえかよっ!!
 なぁ、陳さん! アンタは時々、自分が統括している店舗を回って味のチェックをしてるって聞いたことがあるけど、何かいっ? 四川飯店グループ方の仕事が忙しくて、麻婆豆腐店の方はどうでもよくなっちまったのかいっ? いや、それどころか、ゴルフの方が忙しくて、そんなことを注意する暇なんか1ミリも無いのかいっ?
 あのねぇ、オレはもう20年も陳建一麻婆豆腐店に通ってんだよっ。好きなんだよっ。アンタのところの麻婆豆腐が!! 何人の友達に勧めたのかも、最早その数だって多過ぎてわからねぇよ!!
 なぁ、陳さん! これでいいのかいっ。答えてくれよっ!!


 陳さぁ~~~~~~~んんん!!

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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