MENU

ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

東映の波の現場を探せ! PART2

 今から約7ヵ月前の2023年2月3日(金)。
 東映映画の本編が始まる前に流れる、あの海岸の岩に波がブチ当たる場所はどこなのかを調べるため、その場所が千葉県銚子市にある犬吠埼灯台の付近という情報を得たオレは、その銚子市が地元だった後輩のタクジを連れて現地へと向かった。で、意外と簡単に波がブチ当たる岩は特定出来たのだが、その波が当たっている映像を撮ろうと海岸まで行こうとしたが途中から海の中に入らねばならず、と言っても時期は極寒の2月だったため、そこで取材は終了となってしまった。


 そして、それから数ヵ月経った今年の夏は異常なくらい暑く、しかも、9月に入っても全く気温は下がらなかった。 

(ああ、こんなに暑いなら、あの東映の波を撮るために楽勝で海の中に入れるなぁ。この前は目標の岩を見つけたってだけの話で、やっぱりあの取材は東映のと同じ映像を撮らなきゃ仕事を達成したことにはならないよな) 
 そんなことを思っている内に、その気持ちは日に日に強くなっていった。てか、オレはこの手の取材をする時に、何としてでも目標を達成しようという気力が昔から弱かった。で、30代の時に紀行本の取材の為に海外に行った際には、いつも同行カメラマンのカモちゃん(戦場カメラマン)に怒られていたのだ。 
(よしっ、やったるか……) 

 

 気がつくと前回一緒に銚子に行ったタクジに連絡を入れていた。そして、やがてタクジから『9月15日の金曜に会社の休みを取りましたので、その日に銚子へ行きましょう』というLINEが入った。 
『じゃあ、この前と同じく午前10時頃にウチに来てくれよ』 
『いや、ゲッツさん。海の波には干潮時と満潮時があって、この前はその時間を無視して出発した上に、銚子に着いてもノンビリと飯なんか食ってたから、海はすっかり満潮になってたでしょ。で、15日の銚子の海の最も潮が引く干潮時間を調べたら午前10時22分なんですよ。だからゲッツさんのマンションからは、遅くても午前8時には車で出発しないと、またあの岩に波がブチ当たる映像は逃しますよ』
『いや、だって、オレんちに8時って言っても、お前は立川から電車で来るんだから、6時には起きなきゃ間に合わないんだぞ』 
『いや、自分、いつも仕事がある日は5時半には起きてますから』 
『でも、干潮時に行かなくても、今度は短パンをはいてけば海の中にも入れるから、そこまで神経質にならなくてもいいんじゃね?』 
『いや、ゲッツさん。海をナメちゃダメですよ。逆に満潮時近くにケータイで動画を撮ってたら、波に足をとられて下手すりゃ死んじゃいますよ』 
『驚かすなよっ。だって、あの岩に波がブチ当たる様子を撮る位置って、せいぜい海の中に入ったって30センチぐらいだろ?』 
『じゃあ、俺はもう行かない。ゲッツさんは1人でノンビリと行って死に損なって下さいよ』 
『いや、わかったよ。……8時に出発するよ』 
 
 つーか、何でタクジがこんなにLINEでムキになってるかがわからなかった。今回の取材の模様を文章と写真にして載せるって言っても、その媒体は前回と同じく雑誌『パチンコ必勝ガイド』のネット連載なのである。まぁ、ネット連載をナメてるわけじゃないが、その取材が仮に上手くいかなくても、少なくてもタクジは全く困ら………ああ、オレのダメなところはこういうところかっ。そうなんだよな。取材を最初からナメてるんだよ。だから毎回準備不足で……よし、今回はビシッと決めてやるぞ!! 
 で、その9月15日の朝8時ジャスト。駐車場に止めてあるオレの車の前に現われるタクジ。気持ち悪い人の顔が沢山印刷されている変なチューリップハットを被ってる以外は、海の中に入ることも考えてオレと同じく短パンもはいてるし、靴もサンダルで、万一のことを考えてリュックの中には普通の靴も入れてあるとのこと。 
 つーことで早速、外環自動車道と東関東自動車を乗り継いで千葉県の潮来インターで下り、そこから約20キロもある下道を走ったのだが、この日は道が適当に混んでいて、結局銚子の犬吠埼灯台に着いたのは11時を少し過ぎた頃だった。 

「ゲッツさん。とりあえず早くあの海岸に行きましょう」 
「お………おう、じゃあ、前回と同じくコッチの右の方から下に降りてこうぜ」 
「いや、左側から回りましょう!」 
「えっ、何で? てか、この前、タクジの友達が最初にそっちから回ったけど、途中で道が完全に海の中に入っちゃってて、結局は右側からの進路に変えたじゃん」

「今日は、まだ干潮を1時間ぐらいしか過ぎてないから、きっとあの時の道は海から出てますって。それに右から下に降りてく道は、途中で足場の怪しい急斜面が2カ所もあったんで、今日は左から行きましょう」 
「えっ、あぁ……そ、そうだな」 


前回、犬吠埼灯台の近くにあったコレを発見し、東映の波が当たる岩がどれかがわかった

で、今回、新たに取り付けられた宣伝板で、三越百貨店の包装紙のデザインを担当した画家が犬吠埼の波に洗われ丸みをおびた石を見て、そのデザインを完成させたってことが書かれていた


 
 で、早速下の海岸へと向かう左からの階段をサクサク降りていくタクジ。オレも離されないよう奴の背中を必死で追ったのだが、道が大きな岩がゴロゴロしているコースになった途端、急にフラフラして、何度も派手にコケそうになる始末。が、オレがそんな事になっているのに、まるで中学生の少年のように岩の上を飛ぶように進むタクジ。ダメだ、オレと奴とでは体幹の強さが全然違う。この時のオレは、そのことを嫌というほど実感させられていた。 


どんどん進んでいくタクジ。趣味は、自分の娘に生意気を言われること

ゴツゴツした岩の上も何のその。月のお小遣いは、ちょっと値上がりして9300円

一方、オレはゴツゴツした岩場に悪戦苦闘。おい、ジムでトレーニングしてるのにどうしたんだよ!?
 
 が、とにかく犬吠埼灯台の真下まで進まないと、その3つの岩は現れない。オレは自分の体重に圧倒されながらも、とにかく必死にタクジの後を追った。その内、前回来た時にタクジの友達がその崖を曲がったところで道が水没し、無条件で戻らなくてはならない地点まで来たが、ナント今日は水が完全にひいていて、そのまま進むことが出来た。そう、干潮を計算したタクジの完全なる勝利だった。

 


真上に見える犬吠埼灯台。確かにココだ!

で、遂に目的の岩が目の前に。でも、何か違うような気が……

 

 そして、その道を進むこと5分。 
「いゃあ~、ゲッツさん。ようやく着きましたね。ほら、右手にある山の上を見て下さいよ。あそこに犬吠埼灯台がありますから」 
「ぜぇ………ぜぇ……ああ、ホントだ。ぜぇ……ぜぇ……確かに間違いないわ」 
「で、例の3つの岩が目の前のアレです」 
「えっ、じゃあ、海の中に入らなくても、ぜぇ……ぜぇ……撮れちゃうじゃん。……えっ、てか、違わねえかぁ?」 
「え、何がですか?」 

 


これが東映の画面。ね、岩は3つでしょ?

 

 てか、あの映画本編が始まる前に流れる、あの海岸の岩に波がブチ当たるシーンは小さな3つの岩があるのである。ところが、タクジが指差した岩は奥に小さい岩があり、そして、その前に横に細長い岩が1つだけあるのだ。で、そのことをタクジに言ったところ

「いや、だから今は干潮近くの時間だから水がひいていて、ホントは手前の横に細長い岩の中心部分は海の中に隠れてるから満潮時は3つの岩に見えるんですけど、今は2つなんですよ。ほら、手前にある細長い岩の中心にある低くなってる部分を指で隠すと岩が3つあるように見えますから」 
で、そうやってみたところ、 

 


た、確かにそうだ……

「あっ、ホントだっ!」 
「ねっ……。早くこの岩に波が当たる動画を撮って下さいよ」 
「お……おう」 

 


これが東映の映像。最後の方にオレが映ってるのがマヌケ(笑)

で、これが今回オレがケータイで撮った映像。わかりづらいか? 黙れ‼️

 

「あ~あ……やっぱり大きな波は来ねえなぁ」
「そりゃそうですよ、だって干潮ですもん。ましてや、あの東映の波はCGも加えられてるんですから、同じような波の飛沫を撮るのは無理ですって」 
「まぁな……。でも、一応これで目標は達成したからヨシとするかぁ」 

 


現場で記念撮影をするオレ。が、頭の中では食事のことしか考えてなかった

 

帰りは疲れ切り、もう意識は朦朧

 

なぜか心の中では、オレが麻生太郎の頭から例のボルサリーノのソフトハットを剥ぎ取り、奴の足元に叩きつけている映像が流れていた

 

 で、平地にまで戻ってきたオレは、前回も寄った「嘉平屋」っていう海産物屋でカレーボールっていうオデンのネタみたいなものを塚ポンへの土産として購入。 

 


海産物屋でポーズを決めるオレ。が、この時、10年前の芦田愛菜に押されても楽勝でブッ倒れるほど憔悴していた

続いては、タクジに前回は臨休で休みだった「一心」っていうカレーととんかつの店に連れて行かれた。 

 


今回は無事に営業中だった「一心」

 

これがオレらが頼んだカツカレー

 

が、「一心」で遂にトランス状態になっているオレをタクジが隠し撮り。これ、マジです(笑)

 

 で、ふと我に返って「一心」の自販機を見たところ、ナント、カツカレーの弁当が520円という安さで、気がついたら塚ポンの店にいる奴らに配るために、それを10個購入。

 

ふと我に返りカツカレーを食べ始めるオレ

 

タクジは中学生の頃から、この「一心」に通っていたらしい

 

カツカレー弁当を10個も買い、ドヤ顔でそれを掲げるオレ。海辺の伊達直人か


 さらに最後に、タクジが「銚子市内に『徳屋』っていうサカナサブレを売ってる店があるから、すいませんがソコに寄ってくれませんか?」と言ってきたので「勿論いいよ」と答え、奴のナビでその店に向かっていたところ、 
「ウチの嫁と子供って、とにかくサカナサブレが大好物で、俺がコッチに帰ってきた時は必ず土産として買ってってやるんです。今年の5月にも買ってってやったら、小学4年の娘が『トトサブレだ、トトサブレだ!』って叫んで、それをポリポリ食べ始めたんだけど、もうその仕草が可愛くて可愛くて…」
(なぁ、タクジ。喋ってる途中で悪いんだけど、その話ってまだ続くのか? ま、いいや。とりあえず今、頭の中で葛城ユキの「ボヘミアン」のレコードをフルボリュームでかけたから、気にしないで話し続けていいぞ) 

 

これがサカナサブレを売ってる「徳屋」。気になる店言葉は「そこまでいっちゃうと万引きになるよ!」

 

これがサカナサブレ。コメント無し

 

 つーことで、またしてもポンコツ取材だったけど、一応東映の波の動画は撮れたのでヨシとして下さい。それからタクジ。今回はホントに助かったよ。あんがとな。 

 ………と、本編が終わったところで、皆も(あれっ?)と思ってることだろうけどさ。いや、今回本文の間に入ってる写真のうちの計3枚は、動画で展開するつもりだったんだけどさ。ガイドワークス編集部でも動画を上げるのは非常に大変らしく、また、東映の波の動画は版権担当に許可を取る必要があり、ま、オレは東映の菅谷プロデューサーが友達だから大丈夫だろうと思ってたんだけど、冷静に考えると菅谷さんは担当外なので、彼に迷惑がかかっても何なので、今回は東映の波の動画、オレたちが撮った波の動画、そして、「一心」でオレがあまりの消耗のため半トリップしてる動画は静止画に変えさせて貰いました。ホント、真からのポンコツ星人ですんませんでした。てへ❤️

 

-----------------------------------------------------

『そっちのゲッツじゃないって!』

◇ガイドワークスオンラインショップ
(限定特典:西原理恵子先生表紙イラストのクリアファイル付)
『そっちのゲッツじゃないって!』

◇Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4865356339

バックナンバー

著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

関連書籍

閉じる