MENU

ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

相変わらずシチ面倒臭い奴

 オレの昔からの友達のキャーム。奴が主催する第4回目の飲み会が、お盆の時にあるらしい。
 “あるらしい”と書いたのは、今回もオレはその飲み会には誘われておらず、第三者から聞いて知ったことだからだ。しかも、今回でキャーム主催の飲み会はラストらしく、その最後の飲み会に大物ゲストが来るらしい。
「つーことは、ラストに板谷さんが出るんですね」
 オレは、その第三者からそんなことを言われた。が、もちろんオレは出席するつもりは無い。なぜなら、誘われていないからだ。

 てか、おれがキャームなら「なぁ、コーちゃん。夏にオレ主催の飲み会をやるから、コーちゃんも来てくれよ。喜ぶ奴もいるからよ、なっ、いいだろ?」って頼むと思う。ところが、キャームはコレが出来ない。何故か?
 それは、オレに借りを作ることになるのが嫌だというか、とにかくオレに負けたことになるのが嫌なのである。いや、もちろんオレは、キャームに飲み会に参加してくれって頼まれたって、それで勝った気持ちにはならないのだが、とにかくキャームにはそれが“悔しいこと”になるらしいのだ。だからオレには声を掛けてこないのである。
 だが、オレとキャームは別に仲が悪いわけではない。今から約5年前、オレはキャームに“ちょっとアナタを休ましてくれ宣言”をしたが、去年の暮れあたりからチョコチョコとラーメン屋などに行く時に誘うようになり、時には週に2~3回もラーメン屋やトンカツ屋に同行することもあった。ところが、年が明けて、その食い物屋巡りがトータル10回を越えたラーメン屋からの帰り道、突然キャームが無口になった。
 そう、キャームは自覚が無いと思うが、突如として不機嫌になることがあって、その際に極端な無口になるのである。で、昔のオレなら、その不可思議さにヤラられちゃうのだが、もうキャーム学に長けたオレは決して慌てず、その無言のまま自宅まで送ってもらい、以後、キャームを誘うのは暫く無しにしたのだ。

 てか、オレだってキャームに付き合ってる時に不機嫌になりたい時だってあるのだ。例えば、今年の3月ぐらいに奴から「昔、コーちゃんに誘われて行った、栃木県の那須塩原市にあるスープ入り焼きそば屋に久々に行きたいんだけどさ」って声がかかった時に正直、オレは驚いた。なぜなら以前、そのスープ入り焼きそば屋に奴を付き合わせた際、「こんな焼きそばの上にラーメンのスープをかけたモノが旨いわけがねえよ!」って言って、奴は殆ど食べなかったのである。ところが、それから10年以上経ってから、あの時のスープ入り焼きそばの味が忘れられなくて……と言われても、ええっ!?とくるしかなかった。

 が、とにかくオレが紹介したモノが旨いと言うので、気分が良くなったオレは、その週の週末にキャームの車に乗り、そのスープ入りの焼きそばの店に行って一緒にそのメニューを食ったのである。そして、店を出て車に戻るなり、キャームは「旨さの原因がわかったよ。あのスープはラーメンのスープじゃなくて、スープ入り焼きそば用に作られたオリジナルのスープなんだ。その証拠に食いながら厨房を観察してたら、ラーメンにかける汁とは別のスープを焼きそばにかけてたんだよ」という言葉を吐いた。で、オレが納得してると、今度は次のようなことを言ってきたのである。
「ああ、で、コーちゃんさぁ。コーちゃんの読者でもある俺の知人が、この近くの益子って町でタコス屋をやってるみたいだから、今からソコに行ってみようぜ」
 キャームのことをあまり知らない奴なら、ここで(えっ………)とくるところを、オレは(やられた………)と思って内心頭を抱えた。そう、オレの本の読者であるその人物は、オレの友達ということでキャームのツイッターもフォローしたのだ。で、キャームはその人物とツイッター上で話すようになり、そして仲良くなっていくうちに「じゃあ今度、ゲッツをキミの店に連れて行ってやるよ」と軽口を叩いたのだ。が、いきなり栃木県の益子町に行こうと言ったりすると「何でそんな遠くまで行くんだよ?」と言われ、オレの読者に会うためと言ったら「嫌だよ、そんなの!」とオレに断られてしまうかもと思ったので、考えた末、益子町の割と近くにあるスープ入り焼きそば屋に標準を定めたのである。
 そう、初めからオカしいと思ったんだよなぁ…。10数年前の、しかも全然ウマいと言ってなかったスープ入り焼きそばを急に食いたくなるわけがねえんだよ。

 ま、結局そのタコス屋に行ったら、その読者夫婦は非常にイイ人たちで、しかも、お世辞抜きでその店のタコスやハンバーガーも美味しかったんだけどさ。つーか、とにかくキャームは肝心な部分を勘違いしているのである。オレはキャームと違って「コーちゃん。悪ぃんだけど、俺が最近タマにツイートのやり取りをしてるコーちゃんの本の読者がいてさ。ソイツらって栃木県の益子町ってところでタコス屋をやってるみたいなんだけど、近い内にその店に行こうぜ、なっ?」って言われたら、結構喜んでその店に行くはずなのである。そう。決してそんなことでキャームに(勝った!)なんて思わないし、逆に自分の友達とソコまで仲が良くなった人たちの店なら是非!とも思うのだ。ところがキャームは、オレにソレを言って断わられたら自分がオレに負けたことになると思って、こんなシチ面倒臭い小芝居を打ったのである。……そう、人に弱味を見せることを怖れる奴って、ココまで物事を面倒臭くするんスよ。


 つーことで、話を遥か前に戻すとね。キャーム主催の最後の飲み会、それに呼ぶゲストは大体見当はつくけど、まぁ、とにかく楽しい会になるといいですね。頑張ってね。ボキは参加しないけど(笑)。

 

バックナンバー

著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

閉じる