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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

熟女好きになった理由

 オレの下半身がまだ完全な獣だった18の頃、荻窪に住んでる彩香(仮)という女と付き合っていた。 
 で、その女の友達に新宿の化粧品屋で働いてる君島(仮)という女がいて、またその女がハンパなく色っぽかった。いや、当時オレたちは3人とも18歳だったが、君島だけはどう見ても20代の半ばぐらいの雰囲気を醸し出しており、おまけに飲んでいる時にウイスキーの水割りを作る仕草などもすっかり堂に入っていたのである。 
 オレは彩香に君島を紹介されて、3人で2回3回と飲んでいるうちに、君島とハンパなくSEXがしたくなっていた。で、ある晩、再び3人で彩香の実家で酒を飲んでいたのだが、その晩は電車が無くなる時間まで飲んでいたので、話のわかる彩香の母親が「今夜は、もうウチに泊まっていきなよ」と言ってくれた。そして、オレたちは彩香の部屋に布団を3つ敷いて、その真ん中の布団にオレが寝ることになった。 
 すぐに隣の布団から彩香のイビキが聞こえてきた。で、そうなるとモクモクと出てくる邪な考え……。気がつくとオレは、反対側の隣で横になっている君島を口説き始めていた。 
 が、友達の実家に泊まっている君島は勿論それには応じるわけもなく、が、布団の中で繋いだオレの左手と君島の右手は、いつまでも離れないままだった。とにかく君島を抱きたかった。今、この瞬間、君島を抱けるなら彩香と別れてもいいと思った。……が、その晩のオレは1人でウイスキーを1本半ぐらい空けており、数分もすると情けないことに君島に対する興奮が睡魔に完璧に呑み込まれていた。 

 翌朝。バタバタという足音で目が覚めた。部屋の中を見回すと彩香と君島の姿は無く、その代わりに食器と食器が当たるような音と、彩香がその朝食作りと思われる手伝いをしているような声が聞こえた。

「あら、やっと起きたんだ」 
 突然、部屋の中を覗き込んでくる見知らぬオバちゃん。 
「あっ……お、おはようございます」 
 そのオバちゃんの正体はわからなかったが、一応挨拶をするオレ。 
「あと少ししたら朝御飯になるけど、食べられるでしょ?」 
「あっ……は、はい」 
「何かしこまってんのよ、うふふ」 
 オレの顔を見て笑うオバちゃん。改めてその顔を見ると、喉のあたりが酒焼けで赤くなっており、いかにも品の無さそうな顔をしていた。思うに、彩香の母親の姉妹か誰かだろうか? 

「まぁ、いいわ。とにかく板谷、布団は私が畳んどいてあげるから、顔を洗ってきなよ」 
(板谷!? てか、何なんだよ、このババア。初めて会ったのにメチャメチャ慣れ慣れ…………えっ!?)
 もう1回、改めてそのババアの顔に目をやるオレ。そして………、
「もっ……もっ……もしかして、き、君島!?」 
「そうよぉ~、誰だと思ったのよ」 
「ふんぎゅううう……」 
 
 生まれてから1番ショックな瞬間だった。オレは中学受験で受けた3つの私立中学を3枚とも落ちたが、その時よりショックだった。化粧が上手い女というのは、ここまで見事に男を騙せるものなのか。てか、化粧というより、完璧に自分の顔の上に全く違う女の顔を描いてんじゃねえかよっ。ズル過ぎるだろっ、これ!! 

 それ以降、オレは(おっ、結構キレイだなぁ)という女の顔を見ても、冷静にまだ色々な絵の具が乗ってない元の顔を想像するようになった。で、そうなると男の中でもホントに惚れ惚れするような人相をした奴が殆ど存在しないように、女の中にも無条件で心が奪われそうな顔をした者は殆どいないということがわかった。そして、変に冷静な青春時代の後編を送ったが、その後、オレは女の顔の作りがどうかというより、その立ち振る舞いや所作に色気を感じさせる熟女が好きになって、そういう道を爆進するようになったのである。 

 

 いや、改めて言います。熟女最高っス!!

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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