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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

オレとしては微妙だなぁ……

 はい、今回の話は久々に日本のプロ野球についてなので、前にも野球のことを語る前に言っといたが、今回も野球に興味が無い者は当コラムを読み飛ばしてくれ。

 日本のプロ野球には、メジャーリーグに合わせるようにして時々新しいルールが入ってくる。最近ではコリジョンルールというのがあり、2014年にメジャーリーグで採用され、日本のプロ野球にも2016年から採用された。これはどんなルールかというと、野球における本塁での過激な接触プレーによる負傷者を無くすためのもの。超簡単に言ってしまえば、ホームに突入するランナーは(キャッチャーに)体当たり禁止。また、野手(これも主にキャッチャー)はホームベースを体で隠してブロックするのが禁止となった。で、採用後、どうなったのかと言うと、これはもうキャッチャーの方が突入してくるランナーに対してホームベース上の道を空けた上でタッチにいかなければならず、キャッチャーにはとてつもなく不利なルールになった。
 あくまでもオレとすれば、プロ野球のホームベース上での、あのキャッチャーとランナーが激突する迫力あるシーン、それがなくなってしまったことは少し寂しい気がするのだ。

 さて、その次に導入されたのが、メジャーリーグで採用された「チャレンジ制度」に合わせるように、2018年シーズンから日本でも導入されることとなった「リクエスト」である。これはどういうルールかと言えば、審判のジャッジに不服があればビデオ判定を要求できるというもの。が、ストライクやボールの判定、ハーフスイングなどは対象外で、要求出来るのは監督のみ。9回で各チーム2回。延長に入ったら、もう1回要求の権利が発生する。審判の判定が覆った場合は、要求回数はカウントされず、検証によって判定された結果に抗議したら、その時点で退場となるというものである。
 で、採用後、どうなったのかと言えば、これは以前にも書いたことがあるが、予想以上に審判の肉眼での判定に間違いが多かったのだ。よって、昔は日本のプロ野球の審判は世界一だと言う奴がタマにいたが、リクエスト制度が導入されて数年経った現在では、それを言う者は殆どいなくなってしまった。
 つーことは、審判は軽視されるようになったかと言うと、そんなことは無い。そして、とにかく微妙な判定は殆どがビデオを見て正確にジャッジしてるので、審判と監督や選手たちが言い合ったり揉み合ったりすることも無くなった。しかも、明らかに危ない球を投げた投手は危険球ということで、即時退場になっている。

 そう、つまり現在のプロ野球は、昔のような乱暴な要素が無くなってしまった。もちろん、それはイイことだとは思うが、一部の年配の男のファンの中には試合を見てると時々発生する乱闘を何よりの楽しみにしている者がいるのも事実で、オレとしても妙にシステマチックになってる現在の試合運びには、時々退屈さを感じてしまうこともある。

 さらに、そういう土壌になってきている現在の日本プロ野球界に、オレは4~5年前からある小さな「異変」が起こっているのも感じている。ま、異変と言うのも大げさかもしれないが、皆も見たことないか? バッターがヒットを打って塁に出ると、例えば一塁にいる時は相手の一塁手や一塁審判に軽く頭を下げている選手が意外と多いのだ。それも特に若い選手の中に。
 いや、まぁ、一塁手になら頭を下げてもいいとは思う。特にその相手チームの選手が同じ出身校の先輩だったり、顔見知りだったりすれば「どうも!」頭を下げても何ら不思議はない。ところが、プロ野球の審判というのは仕事でその場にいるのである。いってみればスーパーのレジのところにいる人はレジ打ちという仕事があるからソコにいるわけだし、派出所にいる警察官だってソコにいて、色々なことに対応するのが仕事だからソコにいるわけなのだ。

 そう、味気ない言い方だが、皆、その場にいるのは仕事で給料を稼いでる最中だからソコにいるだけなので、そういう人たちにわざわざ頭を下げるのは違和感を感じる、って話を先日、知り合いの息子にしたところ、彼からこんな話をされた。
 打席に入る、出塁する、守備につく時に、審判に頭を下げるというのは少年野球では当たり前の話である。なぜなら、少年野球では保護者がボランティアとして審判をやるケースが殆どなので、審判を務めてもらってる立場の少年らが頭を下げるという行為をしていると言うのだ。つまり、ルールとして決められてるわけではないが、やって悪いことではないので、現在のプロ野球選手の中でもその一部が、挨拶を礼儀としてやっているってことらしい。
 なるほどね……。確かに礼儀が悪いよりは良い方が気分はいいが、それでもヒットを打って一塁に出た選手が、やたら四方八方を見て頭を下げまくってる姿っていうのは、あくまでもオレ的には何か気持ち悪いんだよなぁ~。

 

 つーことで今週は以上です、編集長!

 

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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