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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

板谷B級グルメ会

 オレは月に何回もグルメ会なるものをやっている。 
色々な情報から是非一度訪れたいという店をピックアップし、そこを実際に訪れるのだ。平均1日に2回食事をし、腹ごなしにちょっとしたイベントに参加し、後日のためにテイクアウト品も買ってくるというのが理想。1人でグルメ会に出掛ける時もあるが、大体が2~3名で行く。 
 元々オレは食べることが大好き。しかも昔、パチンコの旅打ち企画を4年間もやっていて、その間、日本全国の各県を月に1県ずつ回っていたので、日本中のB級グルメ店のメニューを食べまくってきたのだ。また、それに加えて旅行記を書くためにタイ、ベトナム、インド、ミャンマー、インドネシア、ドイツなどの外国でも積極的に食事をしており、それらがオレの舌に旨い料理の指数を計れる機能を作ってくれたのである。 
 20代後半からB級グルメを中心とした生活を、時には周りの者たちに呆れられながらも続けてきたが、もうすぐ60歳の還暦を迎えるオレには大きな問題が新たに出てきた。そう、時間が無いのである。今、人生100年時代と言われてるが、そんなものはオレから言わせれば誤魔化しなのだ。その人生100年と言われてる寿命の長さは、病院で年配になってから、ただ管で栄養なんかを自動的に取らされてる人たちも含めた寿命の長さでね。実質的には70~80歳台でENDなのだ。つまり、80代になると自由に動けなくなることを考えたら、あと正味10年しかグルメ会を続けられる時間が無いのである。そんな短い時間の中で既に押さえている美味しい店に時々行きつつ、新規開拓のグルメ店を見つけなくちゃいけない。そうすんとね、グルメ指数もおのずと厳しくなるのだ。 
 今は、まぁ一般的にそこそこ旨いと言われてる店は、その通りで不味い店は無い。そう、大体が旨いのだ。でも、重要なのはそこからで、昔だったら旨いと思えばグルメ帳に即キープしていたのだが、今のオレには時間が無い。つーことで、旨いと思っても、じゃあ1ヵ月以内にまた来たいか?と自問自答して、そこまでじゃないなぁ~と思った店はリストから弾くようにしている。で、グルメ会で各所を回っていると大体が、これ。つまり、旨いとは思うんだけど、じゃあ、1ヵ月以内にまた来たいかと尋ねられたらNOと答えてしまう店が殆どなのだ。 

 最近のオレには、あと1つ大きなマイナス要素が付いて回っている。それは異常なまでの“臨休”の引きの良さ。資料やデータを見て、よし、今日はあの店は定休日じゃないと確認してから行っても、その店のシャッターが閉まってて、そこに『申し訳ありませんが、本日は店主が体調を崩したのでお休みさせてもらいます』とか『妻がインフルエンザのため、来週の木曜日までお休みを頂きます』と書かれた紙が貼ってあることが異常に多いのだ。で、こういうことを書くと「バカじゃないの。そんなもん、その店に電話して『すいません、○日は営業してますでしょうか?」って訊けば解決する問題じゃない」とか言う人(特に女に多い)がいる。でも、まぁ、これはオレの性分でもあるのだが、そこまでキッチリと相手の飲食店を追い詰めて、その結果、臨休は避けられても、そうなるとオレの気分は盛り上がらず、正確な味の判定が出来なくなってしまうのだ。よって、オレは直前の電話での確認はしない。その代わりに自分以外のグルメ会メンバーを連れてって、ああ、臨休だ、どうしよ、今日は台無しだぁってことにならないため、なるだけその店の近くに1~2軒の行きたい候補店を予めピックアップし、本命の店が臨休でも決して慌てずに、サッサと次の候補店に向かうようにしている。ちなみに、オレと同じくらい臨休を引く、オレが住んでるマンションの近くで串カツ屋をやっている塚ポンという男がいるのだが、彼と一緒にグルメ店を回っていると、その店に着く15分ぐらい前から塚ポンが意味もなくニヤニヤし始めることがあるのだ。で、そんな時にそのグルメ候補店に行くと、80%以上の確率で臨休なのである。最初の内は塚ポンのニヤニヤの意味がわからず、そのことを彼に訊いてみると「いや、目的の店が近づいてくるにしたがって、どう考えてもその店が営業している感じがしないんですわ」と、まさにそのニヤニヤは塚ポンの直感からくるものだと言うしかないのだ。そして、最近では塚ポンのニヤニヤが出て、その通りに目指してた飲食店が臨休だと、まずオレたちはその店の前で笑い、それがひとしきり治まると何事も無かったかのように次の店に向かうのである。 

 はい、あと2つだけ書かせてくれ。1つ目は、殿堂入りさせる飲食店は最低でも3回は食べに行けということ。そう、オレはさっきから偉そうなことばかり書いてるが、食べた瞬間(あ、これは間違いなく殿堂入りする店だ!)と思っても、2回目に訪れた時には(えっ……この店の料理って、こんな感じだったっけぇ~?)と思うことがままあるのだ。それは体調のせいなのか、店の料理人のせいなのか、はたまた、その時の気分のせいなのかはわからないが、そんな時のためにもオレは(旨いっ!!)と思ったら、なるべく短期間のうちにあと2回その店に通い、それでも変わらず(旨い!!)と感じたら、自信を持ってその店を殿堂入りさせている。 

 で、オレが書きたいもう1つのこと。それはグルメ会においては、オレはそれなりにコーディネーターの役割も果たしているということなのである。要は、自分以外にその日のグルメ会に参加した奴が1~2名いる時には、最初にオレがピックアップしたオレにとっても初訪問の飲食店がハズレだった場合、オレ個人的には次も初訪問の店に行きたいのだが、仮にその店もハズレだった場合、その日のオレの相棒にとってはハズレの1日、ハズレの旅行になってしまう。オレには、それが耐えられない。よって、1発目の飲食店がパッとしなかった場合は、2軒目はあえて自分が確信を持って勧められる飲食店にすり替えるのだ。そうすれば終わり良ければすべて良しということで、オレとグルメ会に出掛けたメンバー達はその日を“いい1日”として帰っていくのである。 
 つーことで、今回の当コラムもこれで終了だが、最後の最後にオレが殿堂入りにした飲食店の一部を書いておくので、参考にしてくれたら嬉しいです。 

◎青島食堂(千代田区、ラーメン) 
◎凛々(福生市、ラーメン) 
◎神名備(文京区、ラーメン) 
◎マムタージ(群馬県前橋市、インドカレー) 
◎マボロシ(神奈川県相模原市、スパイスカレー)
◎ムジャラ(京都市下京区、スパイスカレー) 
◎ふじおか(長野県長野市、蕎麦) 
◎入船(埼玉県秩父市、くるみ蕎麦) 
◎はりや(香川県高松市、讃岐うどん) 
◎岡製麺所(香川県綾歌郡綾川町、讃岐うどん)
◎瀬戸晴れ(香川県高松市、讃岐うどん) 
◎檍(大田区、とんかつ) 
◎生焼きホルモン元家(足立区、ホルモン焼肉)
◎シャーロック・ホームズ(立川市、ハンバーグ)
◎六左衛門(国分寺市、釜飯) 
◎景徳鎮酒家(神奈川県横浜市、中華料理) 
◎和友(江戸川区、うなぎ) 
◎友栄(神奈川県小田原市、うなぎ) 
◎土手の伊勢屋(台東区、天ぷら) 
◎江戸政寿司(埼玉県朝霞市、寿司) 
◎なかよし(杉並区、餃子) 
◎L'ARCO 048(埼玉県蕨市、ピザ)
◎スマート珈琲(京都市中京区、喫茶店)
◎ダンデリオン(西多摩郡日の出町、パン) 
◎ムクバル(栃木県芳賀郡益子町、タコス&ハンバーガー)
◎シリンゴル(文京区、モンゴル料理) 
◎やま中・本店(福岡県福岡市、もつ鍋) 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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