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ゲッツ板谷のスケルトン忠臣蔵

登校しぶり

 今、1つ参ってることがある。
 現在、中学3年になる1人息子が4ヶ月以上も学校に行ってないのだ。そう、登校拒否になっているのである。
 オレは何もわかっちゃいなかった……。
 去年になってから急にウチの息子の母親に対する態度が悪くなった。オレも最初は黙っていたが、そのうち嫁のことを「クソばばあ」「ゲーム中年」と呼ぶようになったので怒鳴りつけたら、生意気にもオレを睨んできた。そして、気がついたらオレは息子のことをブッ飛ばしていたのだ。
 さらに数ヵ月後、またまた嫁に対する態度が酷かったので息子の胸倉を掴んだところ、暴れてきたので再びブン殴ったら、立ち上がってコッチに突っ込んできた。そして次の瞬間、オレは息子の顔面に蹴りを入れ、奴は号泣すると共にようやく暴れるのを止めた。
 (ああ、反抗期か……)と思った。面倒臭いが、この2~3年はソレと戦うしかないとタメ息をついた。

 ところが、今年の1月頃から息子は週に1~2度のペースで学校を休むようになり、2月の後半からは全く行かなくなってしまったのである。当然、昭和生まれのオレは、この大切な時期に何をやってるんだ!!と力ずくで息子を中学に行かせようとした。ところが、いくらドツき回しても学校には行かず、スグに弱い熱帯魚のように自分の布団の中に潜り込んでしまうのである。
 で、そうこうしてる間に息子は中学3年になってしまい、そんなある日、家の中で落ち着いた様子を見せていた息子に「学校で何があったんだよ?」と尋ねてみたところ、最初は何も口にしなかった。そのうち「クラスに2人、気に食わない奴がいる……」という言葉を吐いた。

「そんなもん、ブッとばしてやりゃあいいじゃんかよっ!!」

 オレが何度そう怒鳴っても息子は何の言葉も返してこなかったので、
「じゃあ、その2人のクラスメイトの名前を教えろっ。オレが学校に乗り込んでって、もう2度とお前に高圧的な態度を取らせないようキッチリ脅しつけてきてやるわ!!」
 とドヤしつけたら、「そんなことしたら余計に学校に行けなくなるよ!」と返してきたので、「だきゃらっ、そのクソガキどもが復讐なんてことを考えられないくらいに徹底的に追い詰めてやるわ!!」と言った。が、息子はもう何も喋らなくなり、オレはどうしていいかわからなくなっていた。

 2日後。オレと嫁は2人で息子が通う中学に行き、職員室の隣の部屋で息子の担任の先生と会った。が、その担任の先生も息子に高圧的に出てるという生徒には見当もつかず、とにかく明日から副担任を時々お家まで迎えに行かせますので、それでなんとか学校に通わせるようにしましょうということになった。
 それ以降、オレと同い歳くらいの男の先生が2日に1度の割合でウチに息子を迎えに来るようになり、息子も一応、学生服に着替えて学校の近くまでは先生と歩いていくものの、必ず途中でUターンして家に帰ってきてしまう日が続いた。そして、そんなことが半月ぐらい繰り返されたある日、その副担任と共に息子のクラスメイトの3人の生徒もウチに来て、息子はとうとう中学校の門を再び潜った。さらに3日後、中学の修学旅行で2泊3日間の京都旅にも出掛けてきて、ウチの嫁もこれで一安心とニコニコしていたが、修学旅行から帰ってくると息子は再び学校には行かなくなってしまったのである。
 でも、今度はオレも慌てなかった。ゲーマーでママ友も1人もいないため、息子の学校での状況が全くわからないウチの嫁。もちろん、家でダラダラと原稿ばかり書いてるオレも現状は殆どわからなかったが、オレも自分なりに勉強したのである。

 ウチの息子が陥ってる状態というのは、昔で言えば「登校拒否」だが、現在は「登校しぶり」というらしい。そうなる原因は様々で、いじめが引き金だったり、何か勉強での問題かもしれないし、オレたち家族に何かを訴えてのことかもしれないという。そして、自分の子供にその登校しぶりが起こると親や先生らは必死に学校に行かせようとするが、これがその子にとっては良くない結果を生むことが多いらしいのだ。
 要するに、登校しぶりとは、車にたとえるならサイドブレーキが引かれている状態なのだ。その生徒と無意識から上がってくる「止まれ」の合図。で、その時にアクセルを無理にでも踏ませれば車は動くには動くが、自分の意思じゃないのにアクセルを踏み続ければ、早々に車は壊れてしまう。だから、無理に学校に行かせちゃダメなのだ。
 いや、こう書くと世間の親からは「イジメなんかはドコにいってもあるんだから、そんなんでいちいち休ませてたらソイツは一生ダメ人間になっちまうぞ!! 小・中学校はそういうことも生で対処することを学ぶ場でもあるんだから、変に甘やかすんじゃない!!」という意見も響いてくるに違いない。
 が、オレは欲目抜きで、自分の息子は絶対回復出来ると思っているのである。サイドブレーキを引いたということは、逆から言えば自分も守る力があるという証拠なのだ。つまり、中3といえば、人生においては、やれ、内申書だとか、超大切な時期と言われてるが、ブレーキがかかっている以上はココで十分に休み、そして、将来へと続く強く揺るぎない回復に向かえばいいのである。


 ふぅ……。しかし、オレも昔は親を散々困らせていた分、自分もそういう年頃になってイロイロなモノが飛んでくるね。ま、頑張らなくちゃ♥

 

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著者略歴

  1. 板谷宏一

    1964年東京生まれ。10代の頃は暴走族やヤクザの予備軍として大忙し。その後、紆余曲折を経てフリーライターに。著書は「板谷バカ三代」「ワルボロ」「妄想シャーマンタンク」など多数。2006年に脳出血を患うも、その後、奇跡的に復帰。現在の趣味は、飼い犬を時々泣きながら怒ることと、女の鼻の穴を舐め ること。近親者には「あの脳出血の時に死ねばよかったのに」とよく言われます。

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